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生存圏フォーラム 第16回連載コラム

『エアロゾル(aerosol)』は、「aero(空気の)」と「sol(媒質中に固体または液体が分散しているコロイド系)」を組み合わせた言葉である。すなわち、気体中に浮遊する固体もしくは液体の粒子がエアロゾルの定義となる。必ずしも親しみのある言葉とは言えないが、エアロゾルは私たちの身の回りにたくさん存在している。たとえば、代表格となるタバコの煙をはじめとして、海の波飛沫、土埃、火山の噴煙、車から排出される煤塵、ひいては春になると皆を悩ます花粉も、すべてまとめてエアロゾルである。人とのかかわりでは、古くは和歌にも詠まれた春霞に関与する風物詩的な扱いが主であったが、産業革命を経て近代に入ると、健康被害の観点からエアロゾルが取り上げられるようになってきた。さらに、エアロゾルを介した様々な大気物質や太陽放射との相互作用が明らかになるにつれ、放射強制を通じた気候変動や、酸性雨、成層圏オゾン破壊など地球環境に及ぼすエアロゾルの影響にも注目が集まっている。もちろん、エアロゾルは私たちの生活にマイナスになるものばかりではない。効率の良いスプレー式のエーロゾル化粧品や、微粒子サイズの薬剤を直接肺に送り込む吸入療法など、エアロゾルの有効活用も多く提案されている。単体では目視することもできないちっぽけな存在だが、エアロゾルは、多岐に亘り我々の日常生活と密接に関わる生存圏の重要な要素の一つである。(生存圏フォーラム会員 京都大学助教 矢吹 正教)