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生存圏フォーラム36回連載コラム

さだまさし氏の「天然色の化石」という歌の中に、図鑑などで恐竜の肌の色が、緑や黒に塗られていて、どうして赤や黄色ではないのか不思議に思ったことがあったという内容の歌詞が出てくる。歌自体が作られたのが、30年近く前のことで、現在の科学的な知見からは、恐竜が鮮やかな色であったかもしれないという説もあるので、科学者目線からするともどかしい部分は確かにある。だが、大きな時間スケールと今現在の大切さを訴える力に、今でも心を揺さぶられる曲だと思えてならない。
生存圏科学の使命も、非常に長い時間軸で、持続可能性を追求していく研究であることから、常に、今と未来を見据えて進めていかなければならない分野だと感じている。続く歌詞の中には、もしも5億年ほどたった地球に次の人類が生まれていたなら、空も海も森もみんな、我々が壊してしまったことに気付くだろうかという辛辣な問いかけもある。果たして、未来の人類にそのように思われてよいのかと身の引き締まる思いがする。
歌詞の最後には、あなたと私が並んで化石になったとして、二人がどれほど愛し合っていたかに気付いてくれるだろうかと締めくくられる。一昔前の発見で諸説はあるが、イラク北部のシャニダール洞窟で見つかったネアンデルタール人の化石があった周りの土には、様々な花の花粉が発見されており、死者に対して、そこにあったたくさんの花が一緒に葬られていたらしい。今から5万年ほど前の昔にも愛する者へ花を手向けるような気持ちがあったことを推測させる。科学が解き明かすとてもロマンチックな成果だ。
5万年前の過去から繋がる今がある。そして、今から繋がる5億年先の未来があるのなら、未来の人類が、我々がしたことに思いを馳せた時、この曲を聴いて私は思う。地球の環境を壊しやがってとぼろくそに憤慨されるか、生きていける環境を残してくれておおきにと少しは感謝されるか、今現在の我々には、そして、生存圏研究所の一員である私個人としても、大きな課題が残されているのだなぁと。

(生存圏フォーラム会員 京都大学特任講師 M.K.)