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生存圏フォーラム 第17回連載コラム

今年も実りの秋がやってきた。
鴨川の土手に生えている柿の木にたわわに実った実を毎朝子供たちと眺めていると、子供のころ、祖母が庭の柿の木を眺めながらいつも言っていたことを思いだす。
「柿は欲張って全部もいではだめ。上の方の何個かは、お腹をすかせた鳥さんにとっておいてあげなさい」
最近、日本の木の文化を考える上で、韓国の木の文化にも興味をもち、民俗史や建築史を含めた様々な本を読む機会が増えたが、その中に祖母の言葉によく似た話を見つけた。
韓国の農村では、収穫が終わった柿の木の枝端に1個か2個の柿の実を残す。これを「カッチパプ(かささぎのご飯)」とよび、お腹がすいたカササギのために残しておくというものであった。
黒い縞模様がはいっている柿の木の木材が珍重されたり、柿の汁で布を染めて服がつくられたりと、柿の木に纏わる文化が日韓で類似していることはよく知られているが、今回、ささやかながら、鳥への気づかいという民俗的文化に共通項を見つけ、改めて隣国と我が国の木の文化の歴史的側面に興味がわいている。
食卓に並べた「種なし柿」に入っていた小さな種を見つけてニヤニヤしながら、そんなことを考えた秋の朝であった。(生存圏フォーラム会員 京都大学助教 田鶴 寿弥子)