Research Institute for Sustainable Humanosphere

生存圏フォーラム 第9回連載コラム

ときどき、一般向けの講演を依頼されることがある。特にスケジュールが詰まっていない限りはなるべく引き受けるようにしている。講演は当然、自分の研究の話が主で、そこに尾ひれはひれを付けたり、一般受けしそうな小話も盛り込んだりして聴衆の興味を惹くように工夫をしているのだが、広い意味での生存圏科学にも必ず言及することにしている。私は大気環境学の研究をしているが、生存圏科学の一翼を担っているという自負があるからである。ところが、である。講演を引き受け始めたころ、この生存圏科学というものを、いったいどうやったら一般の人にも身近に感じてもらえるか?と悩んだ。多くの方にとって、地球温暖化やPM2.5という言葉は知っていても、そうした問題を生存圏科学が取り扱う課題の一つであると認識してもらうことは、それほど容易いことではない。頭を抱えていた頃、私に子供が生まれた。すやすやと眠っている子供の顔をみて、講演についての悩みはいっぺんに解決した。さて、いま、私の目の前には、定年を過ぎたシニアな方々が大勢机に向かい、熱心に私の話に耳を傾けてくださっている。『皆さんには、お孫さんがいらっしゃる方も多いかと思いますが、お孫さんが生きていく将来の地球の姿、とりわけ、環境、エネルギー、経済、など案じられますよね?-生存圏科学の原点は、そこにあるんですよ。』果たして、何人かの方々が大きく頷いてくださる様子が演題上から見えた。
(生存圏フォーラム会員 K.T)