研究内容
光・電波による地上からのリモートセンシング
可搬型大気レーダーの開発
MUレーダーのような大型大気レーダーで観測不可能な
下層大気を主に観測する小型可搬式の大気レーダー(ウィンドプロファイラー)の
開発を行っています。
成果の一部は、気象庁の大気レーダーネットワーク
WINDASにも
利用されています。
乱流混合は熱や物質の鉛直輸送に寄与する重要なプロセスですが、
そのスケールが極めて小さいことから観測が難しい現象の一つです。
日米仏の国際共同研究により、
コロラド大で開発された気象センサーを搭載した小型UAVとMUレーダーとの同時観測実験
(ShUREX(Shigaraki, UAV-Radar Experiment)キャンペーン)を実施し、
乱流の実態解明を目指しています。
レーザー光を上空に照射して大気を観測するライダー、
高感度のCCDで超高層大気の微弱な発光を捕らえて大気の水平構造を調べる大気光イメージャなど、
最新の光デバイスを用いた大気の観測研究を行っています。
RASS(Radio Acoustic Sounding System)は、電波と音波を組み合わせ、
上空の大気温度を求める観測技術です。
当研究室では、RASSによる観測技術を開発して実際の大気観測レーダーシステムに応用し、
さらに、それを用いて気象擾乱の観測を行っています。
また、パラメトリックスピーカーを応用した、RASSシステムの開発も行っています。
大気レーダーのためのアダプティブクラッター抑圧実時間処理システムの開発
大気レーダー観測において、しばしば山や建物などの固定クラッターや
航空機など移動物体からのサイドローブエコーが観測の障害になることがあります。
MUレーダーの実時間処理システムにNC-DCMP(ノルム・方向拘束付き電力最小化)法を実装し、
メインローブ形状を維持しながら固定クラッターを抑圧可能としました。
さらに、航空機からのADS-B(放送型自動従属監視)信号を受信し、
航空機の正確な位置情報を利用して航空機エコーを抑圧する手法の
開発に取り組んでいます。
外付けアンテナを用いた新たなクラッター抑圧技術を開発し、
WINDASなどへの適用についても検討していきます。
赤道域下層大気の観測
赤道大気レーダー観測
赤道域では強い太陽放射加熱により積雲対流が活発に励起されており、
それらが駆動・励起する循環や波動によって太陽エネルギーが地球大気全体に
運ばれています。
特にインドネシア域は積雲対流活動の最も活発な領域であり、
かつ大きな年々変動を生み出しており、
このことがエルニーニョ現象等を通じて地球環境変化に大きな影響を
与えていると考えられています。
西スマトラ州において、
赤道大気レーダーを中心とした
観測研究を行っています。
赤道大気レーダーを用いたイメージング観測システムの開発
赤道大気レーダーは周波数領域のイメージング観測が可能ですが、
受信チャンネルが1系統しかないため、空間領域のイメージング観測が
できません。
ソフトウェア無線機を応用して、大気レーダー用受信機の開発を行い、
赤道大気レーダーを用いた多チャンネル観測の実現を目指しています。
赤道MUレーダーシステムの検討
赤道大気レーダーはMUレーダーに比べて送信出力が1/10であり、
中層大気や電離圏のIS観測を行うには感度が不足しています。
また、受信チャンネルが1系統であるため、空間領域のイメージング観測が
できないなど、機能面でもMUレーダーに劣っています。
大気の構造・運動の解明をより一層進めるため、
MUレーダーと同等の感度・機能を有する「赤道MUレーダー」の新設を提案しており、
そのシステム検討を進めています。