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バイオマス系生理活性有機分子に関する研究

平成22 (2010) 年度ミッション専攻研究員
西村裕志

植物に代表されるバイオマスは多様な天然分子を生み出している。本研究では多様なバイオマス成分とともに、これを様々な方法で構造変換することによって生理活性物質・生体防御物質を生産するという新しい研究領域を開拓することを目的とし、バイオマス分解物を分離し、薬効成分・生理活性物質などの高機能性物質としての評価を行う。バイオマスの化学構造と生理活性の関係を科学的に検証するため、超高分解能質量分析法などの精密分析により当該化合物の絞り込みを行い、活性成分の分子構造解析を行う。

木酢液や竹酢液に代表されるバイオマスを分解して得られる成分については、消毒効果や皮膚疾患の治癒効果などが報告されているが、有効な化学成分についての十分な解明は行われていない。バイオマスの熱分解、化学分解、生物分解過程で生じる多様な化合物群は、薬効成分・生理活性物質として、人々の健康増進や安全な生活の維持に寄与する可能性を秘めている。特に分解過程における構造変化は、天然物としてのポテンシャルを大きく広げるものである。研究対象は、木酢液や竹酢液などの熱分解物に加え、バイオマスの化学分解物、生物分解物や、分解過程で生じる微生物由来成分など、広範囲な化合物群から生理活性物質を探索する。

生理活性物質の探索については、本年猛威をふるっている口蹄疫などの有害なウイルスの消毒薬を未利用バイオマスから生産することを視野に入れて、竹酢液や木酢液を中心としてウイルスに対する増殖抑制効果を科学的に評価する。伝染性が強い口蹄疫は高度封じ込め施設以外での使用が許可されていないことから、本研究では、口蹄疫ウイルスと同科のピコルナウイルスを用いて、抗ウイルス活性を評価する。これら一連の研究においては、本学ウイルス研究所と共同研究を行うとともに、他研究機関とも連携して研究を進める。

西村裕志 ミッション専攻研究員(2010年度)