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スギ圧縮木材を用いたGIR接合部の開発

平成21 (2009) 年度ミッション専攻研究員
鄭基浩

日本は、国土の 70 % 以上を森林が占め、中でも豊富なスギ資源に恵まれているが、スギの森林は手入れの行き届かない荒れ果てた状況にあり、国内の環境や社会的問題だけではなく、世界の環境にも悪影響を与える状況にまで至った。この問題を解決するためには、森林の持続的かつ循環的な生産と消費のバランスを取り戻さなければならず、新たな現代科学技術によってスギ材の利用を促進させることが必要と考えられる。

一方、現在の木造建築では、大断面集成材を用いた中規模なラーメン構造だけではなく、広い空間の要求により、一般木造住宅市場でも様々な木質ラーメン構造が枠組み壁工法や在来軸組構法との併用によって益々増えつつある。この傾向により、殆どのラーメン構造には金属金物が使用される場合が多く、製造単価や廃棄面において、不利な面が多いのが事実である。

そこで我々は、スギ材の有効活用の一案として、地域産スギ圧縮木材を用いた引っ張りダボ挿入型 (GIR) 接合法を用いることにより、部材すべてがスギ材で構築でき、かつ、金物を全く使用しない、伝統的接合部のような木材同士の接合法の開発を提案し、地域産材を用いた環境にやさしい超長期住宅の開発を究極的な研究目的とする。

具体的には、スギ材を圧密化することによってシラカシやケヤキのような広葉樹材を上回る強度性能を持ち、かつ独特な材質をもつスギ圧縮木材を GIR 接合部のダボ用として導入する。これにより、高性能を持つ木‐木接合部を実現しながら、一般的な鉄製ボルトを用いた GIR 接合の最大の弱点であった脆性的な破壊の問題を解決可能と考えられる。

本研究では、圧縮木材の接着性能の検証を踏まえ、GIR 接合用ダボとして最適の製造条件を定め、接合部を設計し、力学モデルに基づいた構造性能評価を行う。

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