第170回定例オープンセミナー資料2013年10月9日題目
科学データ国際事業「ICSU-WDS (World Data System)」をめぐる科学とデータと社会の関わり 発表者村山泰啓 (情報通信研究機構/京都大学生存圏研究所・客員教授) 関連ミッション
要旨近年、ビッグデータ等がしばしば騒がれるなか、科学の基盤としてデータの意味が見直されつつある。科学と社会との信頼関係を維持するうえで、オープンな証拠の提示と合理的議論は不可欠である。実験室で再確認できない現象、地球環境などの自然現象においてはとくに、科学的発見の証拠・根拠として、論文およびオープンなデータが必要であるという国際的な議論が行われている。しかし科学情報の共有手段として、印刷物と比べれば電子メディアの歴史は浅い。2008 年、ICSU(国際科学会議; International Council for Science, 1931 年発足)は過去 50 年以上の蓄積をもとに新たな組織 World Data System(WDS)を発足して、長期的なデータ保全活動等や自然科学・人文社会科学まで分野の偏らない新たなデータ相互利用システム・流通体制の実現を目指した活動をすすめている。 また国際的に、原著論文の学術出版と同様に、後世に残すべき科学データについて「データ・パブリケーション(データ出版; data publication)」という形で社会と科学データを共有する試みが提案されている(図 1)。データを論文のように引用・参照する「データ・サイテーション(data citation)」の試みも並行して進められている。例えばオープン化されたデータに対して国際的に一意な識別子(例: DOI など)を付与して論文中で引用する等が検討中であり、オープン化の促進や引用度による業績評価などの議論が行われている。 |