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第2回(2004年度第1回)定例オープンセミナー資料

2004年10月25日(その2)

題目

エタノール生産の為の担子菌とマイクロ波による木材前処理

発表者

田邊俊朗 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)

共同研究者

関連ミッション

  • ミッション 2 (太陽エネルギー変換・利用)

要旨


田邊俊朗 (2004-10-25) 図 1
白色腐朽菌                               
マイクロ波照射                          
図 1: 木質系バイオマスからのエタノール生産

プロジェクト遂行方針

  • 脱リグニン能が高い選択的リグニン分解菌の探索。
  • マイクロ波照射と選択的リグニン分解担子菌による白色腐朽効果を併用した省エネルギータイプ前処理技術の開発
  • エタノール生産の低コスト化・高効率化を図る。

マイクロ波照射と担子菌処理の利点と課題

  • マイクロ波照射
    糖収率が高い(酵素糖化で蒸煮・爆砕や酸処理比)
    密閉系で水共存下、200 ℃以上の高温・高圧処理(高電力消費)
  • 担子菌処理
    省エネルギー
    処理に長期間を要する(数ヶ月)

課題解決方法の提案

  • マイクロ波照射
    照射装置の改良
    照射方法の改善(開放系で 100 ℃程度の処理を検討)
    照射時条件の再検討(溶媒など)
  • 担子菌処理
    短期間でリグニン分解できるような腐朽菌を探索
  • 複合処理
    リグニンやヘミセルロースの完全除去は目指さない
    セルラーゼが木質内部に侵入できるような大きさの細孔形成を重視

マイクロ波処理して脆くなった試料に対して脱リグニン効果が早まるか、または逆に担子菌によって部分的脱リグニンされた試料をマイクロ波処理することで必要な電力を削減できる可能性に期待したい。以上のようなマイクロ波を用いた電磁波の制御技術と微生物の持つ機能とを相乗的に用いることで、地球温暖化問題や枯渇資源に変わるエネルギー資源開発に関わる基礎的なデータを得たい。

プロジェクトの進行状況 (5月16日着任~10月24日)

選択的リグニン分解菌の探索

第一次スクリーニング
   京都府、大阪府および滋賀県近辺の森林から、針葉樹の朽木に生育する担子菌を採取。

第二次スクリーニング
   採取した担子菌を用いて、スギ木粉を 4 週間腐朽させた。腐朽後のスギ木粉をメイセラーゼにより糖化し、糖化率が高い菌株を 6 菌株選択した。

第三次スクリーニング
   第一次、第二次よりも培養規模を大きくし、4 週間と 8 週間の腐朽を開始した。腐朽終了後は、精密に糖化率測定やリグニン含量などの成分分析も行って、目的に合致する最良の菌株を選択する予定である。

マイクロ波照射

マイクロ波照射による木材の前処理については、既存の照射装置を木材の加熱に最適化できるよう改良中である。装置組み立て後は照射方法の改善、照射時条件など検討を行う予定である。

微弱なマイクロ波照射が担子菌に及ぼす影響

マイクロ波照射と担子菌処理の相乗効果を検討する上で、基礎的な知見を得るため、人間の活動に影響を及ぼさない微弱な強度のマイクロ波を常時担子菌に照射し、その生育と色素分解活性について検討した。