研究概要

植物が作り出す多様な「細胞壁」と「二次代謝産物」の研究

 約4億年前、海中から陸上に進出した植物は、乾燥、重力、紫外線に晒される厳しい陸上環境に適応するため、強固な高分子複合体(リグノセルロース)でできた分厚く硬い細胞壁(維管束)や脂質系細胞外ポリマー(クチンやスベリンなど)でできたコーティング膜(クチクラやコルク層)を作る能力を獲得しました。その後、現在に至る長い進化の過程で、陸上植物(維管束植物)は、これら有機高分子の構造を複雑化・多様化させ、細胞レベルで高度に制御する生体機構を発達させました。複雑多様な細胞壁構成ポリマーや細胞外ポリマーの構造と機能、植物がそれを作り出す分子機構を明らかにすることは、陸上植物の進化の道筋と環境適応の仕組みを紐解くヒントになります。

 一方、これら細胞壁構成ポリマーや細胞外ポリマーは、陸上に存在する最大の生物資源(バイオマス)でもあります。例えば細胞壁の塊である木材に代表されるように、人は古来より、身近な植物バイオマス資源を様々な生活用途に利用してきました。昨今、深刻化する環境問題や資源・エネルギー問題を背景に、石油資源に替えて、カーボンニュートラルなな植物バイオマス資源から様々な化学製品や燃料をクリーンに作り出そうという機運が世界的に高まっています。

 植物はどのようにして複雑多様な細胞壁構成ポリマーや細胞外ポリマーを作り出すのか?その仕組み(遺伝子)を利用して、細胞壁構成ポリマーや細胞外ポリマーの形成を人為的にコントロールできるのではないか?そして、あわよくば、バイオマスの生産性や利用性を高めた植物を作り出すことができるのではないか?このような観点から、当研究室では細胞壁構成ポリマー(リグノセルロース)や細胞外ポリマー(クチン、スベリン、スポロポレニン)の構造や形成、代謝工学に関わる基礎研究を行っています。また、これら細胞壁構成ポリマーや細胞外ポリマーと生合成代謝経路を共有する有用二次代謝産物(フェニルプロパノイド)の生合成や代謝工学の研究も進めています。


植物を「採る・作る・調べる」

実験材料は様々な由来の天然植物と自前の遺伝子組換え植物
複雑多様な細胞壁・二次代謝産物を多種多様な分析ツールを使って調べます


主な研究テーマ


研究室紹介動画


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