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「木材の抽出成分による健康影響に関する評価研究」

平成25(2013)年度ミッション専攻研究員
松原恵理

再生産可能で生産量の多い木質資源は多くの優れた特性を持ち、循環型社会の実現に必要な生物資源である。木質資源を用いた居住環境ならびに人の健康維持への影響解析は木質資源の循環システムの構築を目指す上で重要な課題である。木の成分のなかでも比較的揮発性の高い成分「木の香り」は、心理的に落ち着かせ心地良さを与える作用があり、また、生理学的にも心拍数の低下など鎮静的な効果があることが示唆されている。木の香りを活かした木質住環境が人の身心の健康に与える影響に関する解析は、木材利用用途の新たな拡大と木材消費に貢献し得ると考えられる。

昨年度の研究ではスギ材を用いて木質内装実験室を作製し、被験者に単純・長時間の計算作業を負荷した。結果として、スギ材由来香り成分が作業後の唾液中アミラーゼ活性増大を抑制し、ヒトを落ち着かせる効果を持つ可能性を示唆する結果を得た。本年度も引き続き、同実験環境を用いて被験者の心理的・生理的なデータを蓄積しながら研究を推進し、環境計測データとともに木質住環境の機能性について明らかにしていきたい。また、スギ材由来香り成分の作用メカニズムを明らかにするために、動物や細胞を用いた評価実験を併せて行う。