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地球周辺の宇宙環境の積極的改善に向けた工学研究
~地球磁場を利用した宇宙ごみ(スペースデブリ)除去に関する研究~

平成25(2013)年度ミッション専攻研究員
中宮賢樹

1957 年のスプートニク 1 号打ち上げ以来、人類は活動範囲を宇宙に広げて無数の人工衛星を打ち上げてきた。しかし、それと同時に、打ち上げで使用したロケットの破片や運用を終了して地球の周囲を浮遊している人工衛星等の宇宙ゴミ(スペースデブリ)は年々増え続けている(図 1)。これらのスペースデブリは地球低軌道(軌道高度 1000 km 以下)の物では約 8 km/s の速度で飛行しており、これらが運用中の人工衛星や国際宇宙ステーションなどに衝突すれば装置が壊れたり乗員の生命に危険がおよんだりする恐れがあり、スペースデブリは宇宙開発を継続する上で大きな問題となっている。そこで本研究では、帯電衛星を用いてデブリの軌道を変換させ、地球大気圏に突入させてデブリを除去する手法を提案し、その手法の解析・評価を行う。

本研究の特色として、デブリの軌道変換に推進剤を用いずに帯電衛星を利用して、帯電衛星が地球磁場中を飛行する時に得られるローレンツ力を推力とする、新しい推進技術を用いる。この技術の応用範囲はスペースデブリの除去の範囲に留まらず、観測衛星の軌道制御や将来の惑星探査ミッションへの利用が期待される。

昨年度は、帯電衛星の帯電量を周期的に制御した場合のデブリの高度の運動方程式について、近似を用いて解析解を導出した。その結果、運動方程式は単純な強制振動の式となり、制御周期を軌道周期と一致させることで共鳴により軌道を大幅に変更できることを示した(図 2)。また、JAXA等で研究が行われている導電性テザー除去手法と上記で得た共鳴制御による帯電衛星手法との比較検討を行った。その結果、軌道条件によって共鳴制御の帯電衛星の方が効率的に軌道を変換できることを示した(図 3)。


図 1:地球周辺のスペースデブリ


図 2:共鳴制御による軌道変化


図 3:帯電衛星 vs 導電性テザー