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地域材を用いた住宅による木材の循環利用システムの構築

平成25(2013)年度ミッション専攻研究員
鈴木遥

研究の概要

本研究は、地域社会の実情に沿った木質資源の循環利用システムに向けた技術開発の方向性を検討することを目指して、地域社会における木材利用を事例に、地域社会の実情と課題を現地調査に基づいて検討するものである。具体的には、木造住宅のメンテナンスを支える木材利用の総合的システムについて研究している。

調査対象としている地域は、京都府与謝野町加悦地区である。この地区は、京都北部の丹後半島の付け根に位置し、古くから丹後と京都・大阪などの近畿中央部をつなぐ人・モノの交流の中継地として発展してきた。特に、江戸中期から昭和中期にかけては縮緬の製織町として栄えた。今では縮緬生産は衰退しつつあるが、地区内には織物商家や織物工場、近代洋風建築、寺社など、製織町としての歴史を今に残す建物が現存する。こうした町並みは、2005年に、文化庁より重要伝統的建造物群保存地区として指定された。現在、地区では伝統的建造物と町並みの保存修理事業が進められている。

昨年度は、伝統的建造物に指定されている木造住宅を対象とした保存修理工事における木材需要、木材供給の体制、地域材の利用の状況などを現地調査より明らかにした。その結果、木造住宅の保存修理工事は、主屋や土蔵、塀の、屋根や壁を中心に進められていることが明らかになった。木材は工務店や大工によって選択・決定される場合が多く、その背景には、工事予算や納期、商社による木材供給の寡占傾向、地区界隈における製材所の減少、などがあると考察された。かつて、例えば垂木などには地元のマツ材が用いられていたが、こうした利用も現在ではほとんどみられない状況にあることも指摘した。

本年度は主に、(1)地区界隈における製材所の衰退・減少過程とその要因を解明する研究、(2)木材供給システムの変容経緯を隣町との連携を含めて解明する研究、を実施する。そしてこれらの研究を事例に、地域社会に暮らす人々の生活から木材利用の総合的システムの発展の方向性を考察し、そのための技術開発の指針を示すことを目指す。

京都府与謝野町加悦地区の町並み(2013年3月1日に鈴木遥が撮影)