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木質資源の“心地良さ”と生理応答の評価システムの確立

平成24 (2012) 年度ミッション専攻研究員
松原恵理

再生産可能で生産量の多い木質資源は多くの優れた特性を持ち、循環型社会の実現に必要な生物資源である。木質資源を用いた居住環境の形成および人間の健康維持への影響解析は、木質資源の循環システムの構築を目指す上で重要な課題である。

“におい” は木質資源が持つ特徴の一つであり、特有の揮発性有機化合物(VOC)には、ヒトに心地よさや安らぎを与えたり、作業効率を向上させたりといった効果があることは広く知られている。しかし、居住環境と人間の健康を考える上で重要なのは、環境にどのような VOC 成分がどのくらい存在するか、また、その環境で人がどのような影響を受けるかである。居住環境の VOC 分析とヒトの感性、生理応答を関連付けて評価した研究報告は少ない。

嗅覚神経系が、意欲や情動行動に深く関係していることはよく知られている。ストレス社会と言われて久しい現代であり早急な対策が必要とされているが、うつ病など心の病の罹患者数や自殺者数は増える一方である。そこで、木質資源由来の VOC に着目してヒトが快適に過ごせる居住環境創造を探索したい。

これまでの研究で、実験室内壁面にスギ材にスリット加工を施した内装材(スリット材)を配した実験環境を模擬的な居住環境として用いており、本年度は同環境における空気質分析とヒトの作業効率、生理心理応答の解析を行う。ヒトへのスギ材 VOC の影響解析を通して、人間が日常生活を営む生活圏における研究から森林圏へ、しいては安全かつ安心な生存圏の創造を目指したい。

※VOC: Volatile Organic Compounds

松原恵理 ミッション専攻研究員(2012年度)の図