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歴史的建造物由来古材の材質評価に関するデータベースの構築

平成18 (2006) 年度ミッション専攻研究員
横山操

木材の材料寿命の判断は、今なお経験に依存する場合が多く、木材の材料寿命の詳細を把握するためには、経年による木材の材料特性の変化についての科学的記述が必要である。この点に鑑み、わが国は、世界に例を見ない“木の文化”を誇り、潤沢にある古材試料を有効利用しうる潜在的利点を有している。しかしながら、履歴が明らかな古材を系統立てて収集し所有する専門研究機関は多くはない。そこで、実験に供することの可能な古材試料を所轄する、唯一とも言うべきである生存圏研究所材鑑調査室所蔵の歴史的建造物由来の古材を試料に用いることにより、その組織特性、物理的性質、ならびに化学的性質等を総合的に評価解析し、木材の材料寿命の判断材料となる客観的指標を得ることが本プロジェクトの目的である。

特に、今年度は、小原二郎氏より寄贈を受けた歴史的建造物由来の試料の中から、飛鳥、奈良、平安、鎌倉、室町、江戸、明治、大正・昭和、現生まで、各時代を代表する試料をそれぞれ選定し、奈良文化財研究所の年輪年代、歴史民俗博物館の C14 年代を含む、木質科学的手法を総合した結果について古材の材質評価に関するデータベース化を行なう。

また、この学術的取り組みと平行して、全国各地で行なわれている指定文化財である歴史的建造物修理工事において生じる取替え材についても、継続して収集活動を行なっている。それらの樹種同定結果などについてのフィードバックも適宜行なう予定である。関係者各位にお礼を申し上げるとともに今後のご協力をお願い申し上げたい。

なお、このプロジェクトが関与する成果の一部として、2006 年 12 月 20 日に京大時計台において、生存圏シンポジウム “木の文化と科学 VI” を開催予定である。

Yokoyama 2006