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第154回定例オープンセミナー資料

2012年9月26日

題目

無機・冶金プロセスにおけるマイクロ波加熱の魅力
Intelligent material design of metal and ceramics by microwave heating

発表者

樫村京一郎 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)

関連ミッション

  • ミッション 2 (太陽エネルギー変換・利用)

要旨

マイクロ波による加熱は、電子レンジで代表されるように火を使わない点に特徴がある。マイクロ波加熱の利用は 1960 年代頃から始まり、家庭用電子レンジから、乾燥、破砕、物質合成に至る各種の工業応用が試みられてきた。特に無機材料分野では、70 年代後半からセラミックスのマイクロ波焼結を中心として、数多くの研究が成され、マイクロ波加熱における諸現象とその特異性も指摘されてきた。一方、金属の分野においては、マイクロ波加熱は比較的なじみが薄かったが、90 年代の後半になると、マイクロ波による金属粉末の高密度焼結が報告された。本発表ではこの金属・無機分野におけるマイクロ波プロセスを材料屋の観点より眺め、そのプロセスの魅力と設計概念を紹介する。

マイクロ波プロセスの魅力

マイクロ波製鉄

マイクロ波の持つ高速エネルギー供給能に注目した研究として、マイクロ波製鉄が挙げられる。鉄鋼産業では依然高温ガスを利用するプロセスが主となるエネルギー源であり、我が国におけるエネルギー生成に要する温室ガスの排出量の 1/3 をこの分野が占めている(図 1)。マイクロ波製鉄はこの分野における温暖化ガス排出量を削減するために提案され、これまで炭素の燃焼により生成されていたエネルギーを電磁エネルギーに転換することで、排出炭酸ガスを 50 % 削減することが期待できる。

樫村京一郎: 第154回定例オープンセミナー資料(2012年9月26日)図 1
図 1 平成19年度の我が国における各分野温室ガス排出量(環境省調べ)。マイクロ波製鉄は鉄鋼業における排出炭素量を半減することが目的である。

*なお、本研究は日本古来の「たたら」と呼ばれる金属製錬法と最先端技術をマイクロ波でつなぐ側面も有している。

マイクロ波による瓦礫中の有害物質迅速処理

津波によって倒壊し流された瓦礫には、法令で規定された有害物質が、混入していることは各種の調査で判明している。特に、アスベスト繊維強化スレート波板およびスレート瓦の粉砕断面,配管等断熱材からアスベスト繊維が露出しており、迅速拡散防止が必要である。しかし、これらは断熱性、耐熱性が高く熱伝導率が小さいため、従来の方法では塊を均一に加熱処理するには長い時間が必要である(図 2)。これをマイクロ波加熱を用いることで迅速化し、同時にエネルギーコストの向上を図る。

樫村京一郎: 第154回定例オープンセミナー資料(2012年9月26日)図 2
図 2 球形のコンクリート加熱時における中心温度の時間プロット。1050℃でコンクリートを加熱した場合、160kgの塊につき8時間もの処理時間を必要とする。それに対して、マイクロ波加熱は格子による熱伝導とは異なるエネルギー伝送経路を有している。この高速エネルギー伝送を利用すれば、1000万トン超の瓦礫無害化処理を見据えることができる。