ミッション 2: 太陽エネルギー変換・利用
背景
地球は、物質的にはほぼ閉じた系であるが、エネルギー的には太陽からの輻射などによる流入があり、閉じた系(孤立系)ではない。地球上の生物の生存はこの太陽輻射エネルギーに直接・間接的に依存している。人間の活動を支えるエネルギーもその大半が太陽エネルギーによるものである。石油に代表される化石燃料は過去の太陽エネルギーの堆積物であるため、その使用により、蓄積された二酸化炭素が放出され、現在の炭素循環系に余分な付加を与え、深刻な地球温暖化問題を引き起こしている。人類が継続的に発展していく為には炭素循環の平衡を壊さないよう、太陽エネルギーの変換・利用によるクリーンエネルギーの有効活用を積極的に推進する必要がある。また、地球人口の爆発的増大のため今世紀中盤以降には人類の経済活動に見合うエネルギーを化石資源から供給できないと予想されており、社会基盤を化石資源の消費から、再生産可能な太陽エネルギーの変換利用に転換することが強く求められている。
目的
本ミッションは太陽エネルギー変換・利用手法を多角的に研究し、将来の循環系社会に有用なエネルギーのベストミックスを目指し、化石資源に依存した社会からの脱却をはかることにある。原子力発電に頼る現在の日本の将来エネルギー供給構想は、現状で考えうるエネルギーのベストミックスという観点では優位であるが、数十年先を考えた場合、逆にエネルギー源が単一化し、様々な問題が生じる。将来の循環型社会を支えるエネルギー源としては様々なものがあるが、本ミッションではまず宇宙太陽発電所 SPS の研究と、光合成による炭素固定化物である木質系バイオマスのエネルギー・化学資源変換を推進する。
意義(期待される成果)
化石資源の変換技術に依存した 20 世紀の文明が、地球環境に深刻な打撃を与え、同時に資源枯渇による社会基盤の崩壊の危機を招いている。太陽エネルギーの輻射を利用した持続的な社会の構築は、21 世紀に課せられた最重要課題である。宇宙太陽発電所 SPS はクリーンでかつ巨大基幹エネルギー源となり得る次世代発電法であり、化石資源の消費量を減らす効果と共に二酸化炭素排出量を減少させ、京都議定書を実現するための有効な将来システムである。また、木質バイオマスの利用は、木材をエネルギー・化学成分として利用することにより化石資源の消費量を減らす効果を生むばかりでなく、木材の変換プロセスから生まれた経済的恩恵を再び森林バイオマスの育成に還元するという循環型社会の構築に貢献する。
プロジェクト
- 宇宙太陽発電所 SPS に関する研究
- マイクロ波前処理・微生物複合処理による木質バイオマスのエネルギー・化学資源化(融合萌芽プロジェクト)
- 熱変換プロセスを利用したバイオマス資源からのエネルギー開発(融合萌芽プロジェクト)
- 宇宙太陽発電のマイクロ波送電技術を用いた CO2 レス人工乾燥システムの開発(融合萌芽プロジェクト)
- 宇宙太陽発電を利用した住宅の省エネルギー・高耐久システムの開発(融合萌芽プロジェクト)
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