IEEEマイルストーン
IEEE は、2013 年末において世界 190 ヵ国以上に 43万人を超える会員を擁する電気・電子・情報・通信分野の世界最大の学会で、日本の会員数は14,384人です。IEEE Milestone は、IEEEの分野において達成された画期的なイノベーションの中で、開発から少なくとも 25 年以上経過し、地域社会や産業の発展に多大な貢献をしたと認定される歴史的業績を表彰する制度として1983 年に創設されました。これまでに100件以上が認定されており、日本からは指向性短波(八木・宇田)アンテナ、富士山レーダー、東海道新幹線などが認定されています。
銘板
銘板和訳
電気電子情報通信分野におけるIEEEマイルストーン
「MUレーダー(中層超高層大気観測用大型レーダー), 1984」
1984年に建設された京都大学のMUレーダー(中層超高層大気観測用大型レーダー)は、二次元アクティブフェーズドアレーアンテナシステムを用いた世界初の大規模大気レーダー(MST/ISレーダー(中間圏・成層圏・対流圏観測/非干渉散乱レーダー))で、三菱電機(株)との共同で開発されました。MUレーダーにより、連続的で柔軟な大気観測が可能となり、大気科学、レーダー技術の発展に大きく貢献しました。
2015年5月
MUレーダーの開発 -- 京都大学・三菱電機の産学連携 --
京都大学における大型大気レーダー建設の構想は1970年代まで遡ります。当初は超高層大気を観測するIS(Incoherent Scatter)レーダーをアジア域に初めて建設することが検討されていました。当時「未知圏」とも言われていた中層大気の観測に、レーダーが有力な観測手段に成り得ることが分かり、中層大気(Middle atmosphere)観測を主対象とし、超高層大気(Upper atmosphere)の一部も観測できる、MUレーダー構想へと収れんしていきました。
時間変動の激しい中層大気中の大気波動を高分解能で観測するため、未知の技術であったアクティブ・フェーズドアレー方式に挑戦することにしました。1970年代末にMUレーダー構想を論文投稿したところ、査読者から「Pie in the sky (絵に描いた餅)」とのコメントが返ってきたほど、多くの専門家が当時の技術では大型の二次元アクティブ・フェーズドアレーは実現不可能と考えていました。しかし、京都大学と三菱電機はアクティブ・フェーズドアレーレーダーの共同開発研究をゼロから開始し、1983年にアンテナ57本、出力120kWによる部分システムによる試験観測を経て、1984年にアンテナ475本(直径103m)、出力1MWのフルシステムの完成に漕ぎ着けました。
MUレーダーはコンピュータ制御によりレーダービームを全方位に、最短400マイクロ秒の高速で走査しながら、高度数百kmまでの大気の動きをリアルタイムに観測できます。完成後も京都大学と三菱電機で定期的に技術検討会を開催し、システムの改良を重ね、常に世界一高機能な大気レーダーの一つとして、超高層物理学、気象学、天文学、電気・電子工学、宇宙物理学など広範な分野に渡る多くの研究成果を生み出してきました。技術検討会の開催数は既に160回を数え、その技術的蓄積はその後の赤道大気レーダーや下部対流圏レーダーの共同開発に繋がり、また三菱電機が設計・製造を担当した気象庁の大気レーダーネットワーク「局地的気象監視システム(WINDAS)」や東京大学・国立極地研究所の「南極昭和基地大型大気レーダー(PANSY)」などにも生かされています。現在も積雲対流活動の最も活発な赤道インドネシア域に、MUレーダー技術を集大成した高性能・高機能レーダー「赤道MUレーダー」を実現するべく努力を続けています。
MUレーダー IEEEマイルストーン受賞記念式典
日時:2015年5月13日(水)10:30~14:30
場所:京都大学 医学部創立百周年記念施設「芝蘭会館」
贈呈式
主催:IEEE関西支部 時間:10:30~11:00 会場:稲盛ホール
司会:IEEE関西支部長 山内寛紀
IEEE本部挨拶 | IEEE本部 会長 | ホワード E. ミコル |
銘板贈呈 | | |
受賞者代表挨拶 | 京都大学 総長 | 山極壽一 |
| 三菱電機(株) 執行役社長 | 柵山正樹 |
記念祝賀会
主催:京都大学・三菱電機(株) 時間:11:15~12:45 会場:山内ホール
司会:京都大学 生存圏研究所 教授 山本衛
開会挨拶 | 京都大学 生存圏研究所長 | 津田敏隆 |
来賓祝辞 | IEEE日本カウンシル 会長 | 青山友紀 |
| 文部科学省 研究振興局長 | 常盤豊 |
| 内閣府 総合科学技術・イノベーション会議 議員 | 久間和生 |
| 電子情報通信学会 元会長 | 吉田進 |
乾杯 | 京都大学 名誉教授 | 加藤進 |
御礼挨拶 | 三菱電機(株)常務執行役 社会システム事業本部長 | 菊池高弘 |
記念講演会
主催:IEEE関西支部 共催:京都大学・三菱電機(株) 時間:13:00~14:30 会場:稲盛ホール
司会:IEEE関西支部 テクニカルプログラムコミッティ 委員長 程 俊
「IEEEマイルストーンの概要」 | |
IEEE日本カウンシル ヒストリコミッティ チェア | 白川功 |
「MUレーダー30年の成果の概要」 | |
京都大学 生存圏研究所長 | 津田敏隆 |
「三菱電機におけるレーダー開発」 | |
元 三菱電機(株) 電子システム事業本部 プロジェクトマネージャ | 浜津享助 |
MUレーダー IEEEマイルストーン 除幕式
日時:2015年5月13日(水)16:00~17:30
場所:京都大学 生存圏研究所 信楽MU観測所
司会:京都大学 生存圏研究所 准教授 橋口浩之