4. 自然界から分離した白色腐朽菌、遺伝子工学的に能力を増強した白色腐朽菌による難分解性のポリマーや毒性のある環境汚染物質の分解
4-1 キノコによるポリマー・環境汚染物質の分解
リグニンは不規則な高分子ですから、酵素の鍵穴には入れません。しかし、白色腐朽菌はリグニンを分解します。しかも、選択的白色腐朽菌は酵素から離れた場所 で難分解性のリグニンを分解します。このことは、白色腐朽菌やそのラジカル反応を利用すれば、酵素には認識されにくい3次元ネットワークをもつポリマーが分解される可能性を示しています。当研究室では、選択的白色腐朽菌が加硫したゴム中のスルフィド結合を分解することを見出しました。また、選択的白色腐朽 菌のリグニン分解を模倣した反応を利用して、加硫ゴムやエーテル型ポリウレタンが菌処理に比べればはるかに短時間で分解することを見出しました。キノコのこうした力は、様々な環境汚染物質の分解にも役立てることができます。これまでに、キノコやリグニン分解酵素による内分泌撹乱物質の分解を明らかにしてきました。