3. 担子菌類(キノコの仲間)の分子生物学
古来より、食用や漢方薬などとして身近な存在であったキノコですが、その生態や生物機能の解明は他の生物種に比べるとあまり進んでいるとは言えません。当研 究室では、最新の遺伝子レベルでの知見や技術を駆使し、各種キノコの生物学的特性の解明や、分子系統樹作成による新規に分離されたキノコの同定、菌株ライブラリーの遺伝子情報解析を行うことで、キノコの分子生物学についても研究を深めています。
また、リバースジェネティックス(逆遺伝学)を用いた遺伝子の機能解明や、様々なプロセスにおいて利用価値の高い新しい性質を持ったスーパー組換えキノコ作 るための基盤技術の確立を目指し、選択的白色腐朽菌における遺伝子発現系の開発を行っています。さらに、形質転換系の効率化や、パーティクルガンを用いた新たな遺伝子導入法の開発、特定の遺伝子の発現を押さえる遺伝子抑制や染色体上で相同組換えを利用したジーンターゲッティング(遺伝子破壊)の実用化に向けて、DNAiやRNAiなどの新しい手法の導入も積極的に進めています。
「基礎科学の発展」と「技術の進歩」は、1つの車軸を支える左右の両輪のようにそれぞれが自ら回転することで駆動力を産み、お互いに前進・深化してくものであ ると思われます。そういった意味において、キノコの生命現象を遺伝子のレベルで理解していくことは、そのユニークなリグニン分解系を構成する素ファクターや分子育種された組換え体をバイオテクノロジーの分野で利用していくことと深く関わり合っていると考えています。