第250回定例オープンセミナー
暖温帯林における分解呼吸
開催日時 | 2019(令和元)年11月20日(水) 12:30–13:20 |
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開催場所 | 総合研究実験1号棟5階 HW525 |
発表者 | 安宅未央子(京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員) |
関連ミッション |
ミッション1 環境診断・循環機能制御 |
要旨
森林土壌圏には分解特性の異なる多様な有機物が供給され、微生物の代謝活動により分解呼吸としてCO2が放出される。分解呼吸は、時々刻々と変化する環境条件(気温や降水)に応答し短期的に変動する。なかでも易分解性炭素を主体とする基質(落葉層など)の分解呼吸は、早い分解による基質自体の重量減少と微生物活性の季節変化による影響をうけて季節的に変動する。そのため、落葉層の分解呼吸の季節的なトレンドは、土壌呼吸の季節変動に影響を与えると考えられる。本研究では、落葉層に着目した分解呼吸速度と環境要因の長期的な連続測定データから、呼吸としての重量減少量を定量化し、微生物活性の季節変化を評価することで、分解呼吸の季節変化を引き起こすメカニズムを明らかにすることを目的とした。
暖温帯林(山城試験地・京都府南部)において、コナラ落葉層を対象に分解呼吸速度(図 1)と環境要因(温度・含水比)の連続測定を2年間行った結果、落葉分解呼吸速度は同温度帯にもかかわらず秋期よりも春期の呼吸速度は高い値を示した。呼吸速度-環境要因の関係から推定された呼吸としての年間重量減少率は約35 %であった。微生物活性は温度や含水比に応じた季節変化を示したのに加え、微生物バイオマスの増減による影響を受けて変動していた。分解の主体である微生物の実態を明らかにし、その因子を組み入れた分解呼吸評価の必要性を示唆している。
図 1. 落葉層分解呼吸の連続測定風景
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2019年8月9日作成