研究背景

 サトウキビ産業では、サトウキビ収穫後にフィールドに残る残滓が有効利用されておらず、地域によっては燃やされて環境破壊を起こしている。これまでに、サトウキビの搾汁残滓であるバガスの利用については長年研究されてきたのに対して、サトウキビ収穫残滓からの有用物質生産の研究例は少ない。東南アジアは特に植物の生育が早く、バイオマスの利用に立脚した地域新産業の創成への大きな貢献が期待される。

課題概要

 本研究は、サトウキビ廃棄物を原料として多様な有用化学品をつくることにより、既存の砂糖産業やエタノール工場をバイオリファイナリー工場に再構築し、持続発展可能な地域社会の創成に貢献することを目的とする。

 具体的には、日本側チームは、バイオマスの精密構造解析をもとに、有用化学品生産に適した変換プロセスを開発するとともに、全体プロセスのLCA解析を行う。タイ国側チームは、高活性多糖分解酵素、合成生物学を用いた酵母のセルファクトリー構築、乳酸、イソブタノールの生産研究を行う。インドネシア国側チームは、リグニンからの界面活性剤の合成、キシランからのキシリトールからの生産を研究する。ラオス国側チームは、物理化学的前処理法やメタン発酵プロセスの開発を行う。

 4カ国のチームによる共同研究を通して、経済性の高いバイオマスの成分分離技術、高機能セルファクトリー、高効率な燃料や化学品への変換プロセスを構築し、地域社会に成果が還元されて持続発展可能な社会の基盤形成に寄与することが期待される。