第142回定例オープンセミナー資料
2011年11月30日
題目
熱帯下部成層圏の水蒸気の季節~10年規模変動 Seasonal to decadal variations of water vapor in the tropical lower stratosphere
発表者
藤原正智 (北海道大学大学院地球環境科学研究院・准教授) Masatomo Fujiwara (Faculty of Environmental Earth Science, Hokkaido University)
関連ミッション
要旨
成層圏における水蒸気は、放射収支やオゾン層の光化学に重要な役割を果たしています。本発表では、1993 年から 2009 年の期間に熱帯で行われた様々な観測キャンペーンによる気球搭載・冷媒使用型霜点温度計ゾンデデータに基づいて、成層圏の水蒸気の季節変動、準二年振動に伴う変動、10 年規模の長期変動を調べた結果について議論します。季節変動については、いわゆる “Tape Recorder Signal” と呼ばれる成層圏水蒸気の特徴的な季節変動の様子がゾンデデータにも見られることが確認されました。赤道下部成層圏の東西風に特に顕著にあらわれる準二年振動については、水蒸気分布に 2 つの効果があることが分かりました。ひとつは、準二年振動に伴う子午面循環の変動に伴う水蒸気分布の上下変動、もうひとつは、準二年振動に伴う対流圏界面気温の変動が作る水蒸気濃度の変動です。最後に、熱帯下部成層圏の東西一様性を仮定し、様々な地点で得られたデータから 1993 年から 2009 年の 17 年間における熱帯下部成層圏の水蒸気濃度の時系列図を作成したところ、1990 年代に微増し、2000 年前後に低下、その後 4–5 年間程度低い値を維持したのち、2004 年以降再び徐々に増加し 1990 年代のレベルに近づく、という 10 年規模の変動があったことが分かりました。従って、成層圏の水蒸気の長期変動を考える際に、線形トレンドのみに注目していたのでは、重要な現象を見落とすことが分かりました。
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