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第138回定例オープンセミナー資料

2011年10月19日

題目

木からダイヤモンドは作れるのか?
Can we make diamond from wood?

発表者

俊充 (京都大学生存圏研究所居住圏環境共生分野・講師)

関連ミッション

  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)
  • ミッション 2 (太陽エネルギー変換・利用)
  • ミッション 3 (宇宙環境・利用)
  • ミッション 4 (循環型資源・材料開発)

要旨

美しい輝きで人を魅了するダイヤモンド、それは宝石としてのみならずその硬さを活かし、カッターや研磨材、表面保護材などとしても利用されています。こうした工業用ダイヤモンドは、その多くが人工的に合成されたもので、黒鉛(グラファイト)からダイヤモンドを合成する方法もその 1 つです。

鉛筆の芯などに使われる黒鉛は、ダイヤモンドと同じ炭素の結晶です。ところが、ダイヤモンドは立方体のように炭素が 3 次元構造で強く結びついているのに対して、黒鉛構造は炭素原子が 6 角形を形成し、ハチの巣の断面のように平面上でいくつもつながったものが何層にも重なってできているのです。このように構造と結びつきの強さが違うために、仲間でありながら固さや色、輝きなど、全く違う性質をもった物質となっています。しかし、黒鉛を高温・超高圧な環境に置いておくことで、その構造を変化させ、ダイヤモンドをつくることができるのです。

では、同じ炭素でできている木炭からダイヤモンドはつくれないのでしょうか。科学の世界では、木炭に黒鉛構造やダイヤモンド構造 (図 1) は現れないというのが定説でした。ところが、その説をくつがえし、世界で初めて木からダイヤモンドをつくることに成功しました。

畑俊充: 第138回定例オープンセミナー(2011年10月19日)
図 1. ダイヤモンドの分子モデル

約 700 ℃で焼成した木炭をアルミニウム系の触媒を使い、圧力をかけながら 2200 ℃まで熱すると、天然黒鉛よりもキレイな黒鉛構造が現れ、その中に 1 µm ほどのダイヤモンド薄膜が形成されることが確認されたのです。

研磨剤、摩耗や腐食を防ぐ表面コーティング材として、また半導体基板への利用などさまざまな用途が考えられます。さらに同じ処理方法で、多層のカーボンナノチューブができることもわかりました。鉄の 6 分の 1 の重量で、強度が 100 倍あるカーボンナノチューブは、驚異の新素材として注目されています。

木質廃棄物から木炭をつくり、その木炭から先端材料を供給する。木に新しい命を与える、画期的なリサイクル技術と言えるでしょう。

(自然に学ぶものづくり: http://www.sekisui.co.jp/csr/contribution/bio_mimetics/1174627_1621.htmlより)