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第122回定例オープンセミナー資料

2010年9月29日

題目

白色腐朽菌によるリグニン生分解系の分子メカニズム解明における新規研究手法の開発
Toward new experimental techniques to analyze molecular mechanism for lignin biodegradation by white rot fungi

発表者

本田与一 (京都大学生存圏研究所・准教授)

関連ミッション

  • ミッション 2 (太陽エネルギー変換・利用)

要旨

白色腐朽菌による植物バイオマス中のリグニン分解系の解析は歴史的には、Phanerochaete chrysosporium を用いて行われてきたが、研究の進展につれて、それぞれの白色腐朽菌の種によって独自のリグニン分解メカニズムが存在することが明らかになってきた。ヒラタケは、リグニン分解を初発すると考えられる分泌型ペルオキシダーゼにおいて、従来知られてきた典型的なカテゴリーには属さないユニークな「多機能型ペルオキシダーゼ」を生産することから、新たなモデル生物として興味深い。最近ゲノムのドラフト配列が公開されたことで、今後急速に研究が進展する時代に入ることが予想されている。

本研究は、白色腐朽菌によるリグニン分解の分子メカニズムを解明し、次世代のバイオリファイナリーにおける低環境負荷的な前処理技術を開発することを目的として、ヒラタケをモデルとして演者らが開発してきた形質転換系およびプロモーター解析系と海外の研究グループの研究実績・環境を有機的に組み合わせることで、(1) 担子菌類では初めてとなるジーンターゲッティング系の開発、(2) プロテオーム解析と逆遺伝学的な手法の融合、(3) リグニン分解に係わる様々な遺伝子の発現制御メカニズムの解明を目指している。その成果は、ヒラタケにとどまらず Ceriporiopsis subvermispora などの担子菌類における独自のリグニン分解メカニズムの解明に大きく貢献することが期待される。本研究は、ミッション 2 「太陽エネルギー変換・利用」における木質バイオマスの変換利用を、より省エネルギー的に利用する新しいプロセス開発を行う基盤として極めて重要な研究である。

今回、平成 22 年度部局活性化経費(海外研修)の支援を受けて、イスラエル、ドイツ、イタリアの研究グループとの共同研究を開始することができたため、報告させていただく。