第104回定例オープンセミナー資料
2009年11月11日
題目
セルロース生合成における紡糸機構解明を目指して Toward understanding the nano-spinning system in cellulose biosynthesis
発表者
今井友也 (京都大学生存圏研究所・准教授)
関連ミッション
- ミッション 1 (環境計測・地球再生)
- ミッション 4 (循環型資源・材料開発)
要旨
セルロースは地球上に最も豊富に存在する天然高分子とも言われ、分類学上で非常に多岐にわたる生物が、毎年何百億トンもの量を合成している。別の言い方をすれば、進化の過程で生物がセルロースを持った場合、それがその生存にプラスに働いたために、セルロースは現在の地上圏に遍く存在すると説明できる。
なぜ優位に働いたのか、その一つの説明として、セルロースが繊維状の凝集体を形成し、生物体の力学的支持を担うことができたことが挙げられよう。セルロースのような剛直な性質の分子をナノスケールの繊維として紡糸する分子機構の解明は、興味深い基礎研究対象であるだけでなく、材料開発への応用も期待できる。
生物が獲得したセルロース合成能の実体は、複雑な膜タンパク質複合体である。研究対象として決して簡単なものではない。そこで単純な実験系として、セルロース生産性細菌・酢酸菌を用いて研究を行っている。本ミッション研究では SDS-FRL 法による複合体構造における分子解剖を行う計画だが、他にも合成酵素複合体の生化学的解析など、我々の最近の取り組みを交えて生存圏に豊富に存在する高分子・セルロースの生合成について概説する。
図 1 酢酸菌の SDS-FRL 像 外膜の PF 面にセルロース合成酵素複合体が、一列の凹みとして観察される。BcsB タンパク質を金コロイドでラベルした。
図 2 酢酸菌のセルロース合成酵素複合体のモデル図; 赤点線は凍結割断した時の割断面
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