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第58回定例オープンセミナー資料

2007年9月26日

題目

衛星重力ミッション GRACE による最近の応用研究

発表者

福田洋一 (京都大学理学研究科地球惑星科学専攻・教授)

要旨

昨年、第 41 回オープンセミナーで、主に GRACE (Gravity Recovery and Climate Experiment) のデータを用いた応用研究を中心に、衛星重力ミッションの概要とその可能性について講演を行った。GRACE は、2002 年 3 月に打上げられた Low Low Satellite to Satellite Tracking (L-L SST) による重力場測定衛星であり、打ち上げ以来、ほぼ 1 月ごとの重力場変化のデータを提供し続けている。最も新しいデータは、本年 5 月頃に公開された RL (Release) 04 データであり、以前のデータに比べ、基準となる静的な重力場モデルや各種補正モデルの改良、また、データ処理アルゴリズムの見直しなどにより、精度が向上している。今回のセミナーでは、まず、衛星重力について簡単な review を行ない、その後、最新の RL04 データを用いた応用として、以下の研究事例について紹介する。

1) 陸水変動の研究

昨年のセミナーの際にも、インドシナ半島のメコン川、イラワジ川、サルウィン川およびチャオプラヤ川の 4 つの主要河川流域での質量変動と陸水貯留量モデルとの比較について紹介した。その際、両者の季節変動量の見積もりは、メコン川、イラワジ川程度の流域より広い空間スケールで良く一致しているものの、モデルとの間に約 1 ヶ月のタイムラグがあることを示した。RL04 データでは、データの誤差が小さくなっていることから、より小さな流域での質量変動も議論できるようになっており、また、モデルとのタイムラグは、貯留量モデルを改善することにより、ほぼ解消することが判明した。

2) 南極氷床変動の研究

南極氷床変動についても、昨年セミナーで紹介したが、RL04 データを用いた、最新の解析結果について紹介する。

3) 2004 年スマトラ沖地震による重力変化

地震際にその断層運動によって生じる重力変化は、理論的には予想されていたものの、量的には大変に小さく、衛星重力での検出はなかなか困難と思われていた。ところが、2004 年のスマトラ地震は、M9 を超える超巨大地震であったため、地震時に生じた重力変化が GRACE によって検出されている。これは、現在、衛星で重力変化が観測された唯一の例であり、関連する話題について紹介する。