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第57回定例オープンセミナー資料

2007年9月19日

題目

歴史遺跡と地磁気永年変化

発表者

家森俊彦 (京都大学理学研究科附属地磁気世界資料解析センター・教授)

要旨

地球に何故磁場があるのか、またそれがどのような役割を果たしてきたかは非常に古くからの疑問であるが、前者については、ここ 20–30 年間の地磁気ダイナモの観測的研究および計算機シミュレーションによりおおきく進展した。地磁気の維持と逆転だけではなく、西方移動など、地磁気永年変化の観測的特徴も、ある程度再現出来る段階まで達している。しかし、ダイナモシミュレーションで用いるパラメーターのなかには、現実的値とまだまだ桁の異なる値でしか与えることができないものがあり、シミュレーション結果の妥当性検証のためには、永年変化の、より詳しい観測的事実を集めて比較する必要がある。後者についても、最近、地球の進化や生命の誕生との関係で興味深いストーリーが提出されている。ここでは、前者について簡単に紹介すると共に、ダイナモ過程の観測的検証に重要であると考えられる歴史時代の時間スケールの磁場変化を遺跡から検出するために、最近私共が始めた試みについて、方法の紹介と、その進捗状況を報告する。

最初に、タイやカンボジアなど、東南アジアに多数存在するクメール遺跡、特に、寺院建築に、磁気コンパスが使用されたという仮説に基づき、その遺跡の方向を測定し、中国や日本においてこれまでに得られた考古磁気学的結果と比較する。その結果は、上記仮説と調和的であるように思われる。ただ、コンパスを用いたという文献証拠等が見つからないので、科学的根拠のある独立な情報が必要となる。

科学的根拠のある情報源としては、残留磁化の測定が挙げられる。そこで、タイの各地に存在するクメール時代の陶器の窯跡が保持する残留磁化を、窯を傷つけることなく測定するための装置を考案し、試作した。その原理と、クメール時代の窯跡、および、奈良時代の瓦を焼いた窯跡で最近行った装置の実地試験使用の結果と改良すべき点を示す。