第55回定例オープンセミナー資料
2007年7月4日
題目
鳥類排泄物による栄養塩の運搬 —都市域ランドスケープと山地帯ランドスケープの比較—
発表者
藤田素子 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)
関連ミッション
要旨
都市化により,カラス類やヒヨドリなど特定の種の個体数が増加した.バイオマスの増加は物質循環機能に影響があるが,都市の森林生態系での物質循環の全体像は,降水を除いてほとんど研究されていない.都市の中で,カラス類やヒヨドリは住宅地で採餌し,ねぐらがある森林で排泄するため,市街地から森林への窒素 (N) やリン (P) の移動をもたらしていると考えられる.この研究では,鳥類排泄物が都市分断林での栄養塩 (N, P) のフローにどれだけ寄与しているかを明らかにし,さらに森林外(住宅地,耕地,草地など)から林内への鳥類による N, P の持ち込みはあるのか明らかにすることを目的とした.アプローチとしては,孤立化した森林が市街地に囲まれている都市では市街地から森林への栄養塩の移動がありうるが,森林が優占している山地帯では森林内での内部循環のみが存在することを利用した.つまり,都市分断林での循環量から山地帯の循環量を引くことで,外部から加入する量を推定することができる.また,どのような採餌特性の鳥類が物質移動に寄与しているのかについても,排泄物の安定同位体や CNP% などの分析を行うことで考察した.


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