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第26回(2005年度第18回)定例オープンセミナー資料

2006年2月15日

題目

地球表層現象に起因する超高層電磁気現象

発表者

家森俊彦 (京都大学大学院理学研究科 附属地磁気世界資料解析センター長)

要旨

地上の磁場観測データに見られる地磁気脈動などの短周期現象は、ほぼ全て太陽風あるいは磁気圏に起源を持つ宇宙空間プラズマ現象が原因であると考えられてきた。しかし、現象が持つエネルギー密度を考えると、質量密度の圧倒的に大きい下層大気擾乱が、電離層より上の極端に希薄で、運動エネルギー密度の小さい宇宙プラズマに影響を及ぼし、地磁気脈動などの電磁気現象を起こすことは十分考えられる。しかしその定量的な説明や観測による確認はこれまであまり成されてこなかった。ところが、スマトラ地震の際に、明瞭な電磁気的影響(電離層電流および磁力線の共鳴振動、電子密度の振動)が観測された。おそらく過去 100 年以上にわたる長い地磁気観測の歴史上初めてであり、地球表層擾乱と超高層プラズマとの結合の理論的説明と、その観測的確認を行うきっかけが得られたと考えられる。現在提案しているメカニズムは地表(あるいは海面)と熱圏との間の音波ダクト共鳴が、電離層でダイナモメカニズムを通して電流および電磁気的波動、電子密度振動に変換されるというものである。同様なメカニズムによると考えられる脈動が、1991 年のピナツボ火山噴火の際にも明瞭に観測されていたことが確認できた。このような現象は、振幅は小さいものの、他の火山噴火や台風接近時などにも見られるようである。

この現象について、これまで調べたこと、現在計画していることなどにつき報告する。