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第25回(2005年度第17回)定例オープンセミナー資料

2006年2月8日

題目

遺伝子発現を指標としたスギの材質特性の解明

発表者

小島陽一 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)

関連ミッション

  • ミッション 4 (循環型資源・材料開発)

要旨

森林資源の枯渇と地球環境の汚染が深刻な社会問題となっている現在,化石・金属資源に代替するような循環可能な資源を探索していく必要がある.産業革命以降の化石資源の大量消費に加え,近年の熱帯林の破壊によって大気中の二酸化炭素量が増加している.このような状況下における課題は,化石資源に代替する資源の開発や大気中の二酸化炭素量の緩和および低減である.これらを解決するために期待ができる方法はバイオマス資源の増加とその利用である.バイオマス資源の増加を期待するには植林育種事業の発展を目指さなければならない.スギ (Cryptomeria japonica D. Don) は日本固有の種であり,重要な造林樹種の 1 つである.しかし,近年では外国材の輸入によりその需要が大きく減少しているというのが現状である.

以上を背景として本研究ではスギの高度利用を大前提として,スギの各種材質特性を遺伝子レベルで解析することを目指した.本研究で用いているヤマグニスギは古くから京都府を代表する優良品種であり,本研究で得られる成果はスギ育種の高度化,地場産業としての林業さらに我が国全体における林業の活性化に貢献できると期待している.

ヤマグニスギは苗木の段階での針葉形状と将来の樹幹通直性に関係があるということが苗木事業に携わっている業者の方々の経験で明らかになっている.それは『苗木の段階での針葉形状が外向き(開いている)である個体は成長過程で樹幹が曲がってしまうのに対し,針葉形状が内巻き(閉じている)である個体は将来的に優れた材を得ることのできる通直な樹幹を形成する』というものである.このことはあくまで経験則であり,科学的な裏づけはなされていない.よって本年度はこの経験則を科学的に明確化することを目標にして考察を行ってきたので報告する.