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第17回(2005年度第9回)定例オープンセミナー資料

2005年11月16日

題目

木材の経年変化解明に向けての試み

発表者

横山操 (京都大学生存圏研究所・JSPS特別研究員)

共同研究者

  • 川井秀一 (京都大学生存圏研究所・教授)
  • 伊東隆夫 (京都大学生存圏研究所・教授)
  • 窪寺茂 (奈良文化財研究所)
  • 矢野健一郎 (東京藝術大学)

関連ミッション

  • ミッション 4 (循環型資源・材料開発)

要旨

木材は、適切な使用条件下では、他に比類のない長寿命材料であることは、現存する歴史的建造物群が証明している。しかし、それらの建造物を構成する材料としての木材の耐用年数については、今なお十分な科学的基礎研究はなされていない。

この点に鑑み、わが国は、世界に例を見ない “木の文化” を誇り、潤沢にある古材試料を有効利用しうる潜在的利点がある。特に、指定文化財由来の古材はその来歴も明らかであり、実験試料として有意義な条件を満たしている。しかしながら、今日まで、国宝・重要文化財の建造物解体修理現場等から生じる古材を、系統立てて収集し、保存管理するシステムはなかった。そこで、現在、歴史的建造物に由来する、使用年代および使用部位・部材名等の履歴の詳細が明らかな古材試料を収集し、これらを当研究所の材鑑調査室において保存管理する活動に着手している。そして、各々の古材試料について、使用履歴とともに、顕微鏡観察による樹種同定の結果や曲げ強度などの物性評価などの様々な情報からなる “古材のカルテ” を作成し、古材に関するデーターベースを構築するための準備を行なっている。

実際の古材の経年による物性変化を、実験室における人為的な促進劣化処理木材を用いた実験結果と比較することによって、今日まで経験的に論じられることの多かった “木材の材料寿命” についての客観的指標を把握することが本研究の最終目的である。しかしながら、この研究成果は、木材科学の基礎研究にとどまらず、建築学・美術史・建築保存史・文化財保存科学など学際領域での発展が期待される。