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第12回(2005年度第4回)定例オープンセミナー資料

2005年7月29日

題目

森林圏における大気観測に関する研究

発表者

古本淳一 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)

共同研究者

  • 塩谷雅人 (京都大学生存圏研究所)
  • 中村卓司 (京都大学生存圏研究所)

関連ミッション

  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)

要旨

地球環境変化の全体像を正確に理解するには地球環境を従来の大気圏、森林圏など個別の領域で考えるのでなく結合した全体の系として捉えることが必要である。特に地球陸上のおよそ 1/3 を占める森林は、大気との炭素や水等の物質循環に大きな役割を果たしている。本研究ではこうした森林大気相互作用に着目して、新しい測器開発ならびに衛星、地上観測データ解析を行うことを目的としている。

森林と大気のエネルギーや物質の相互作用は 3 つの空間スケールに分けて考えることができる。森林はまず大気の最下層(高度数 10 m)の接地層との間で直接物質エネルギー交換が行われる。この観測には大気、微量成分を 10 Hz 程度で観測し大気乱流による大気輸送量を直接測定することが行われている。さらに上層 1 500–2 000 m 程度までの大気混合層内では対流スケールの運動が主に物質輸送にかかわる。さらに上層の自由対流圏では、さらに大きな空間スケールの大気運動が主たる役割を果たす。こうした森林、大気間の相互作用をマルチスケールで観測し相互の作用についてことを目的として以下の研究を推進している。

1. 森林域での大気観測の実現へ向けた研究

接地層と森林間の大気微量成分の吸収/排出量(フラックス)測定は従来天然林での観測が主であったが、人工林(植林地)は樹種、樹齢が同一ならば水平一様とみなせるため水平一様性仮定が必要な直接フラックス測定に適したフィールドである。そこでこれをアカシアマンギウム人工造林地植林地で実現するための基礎調査を行っている。さらに混合層での大気の動きを測定することを目的として森林圏での新しい大気観測技術の開発を行う。森林内のさまざまな点で観測を可能とするため既存の小型ラマンライダーを改造し、可動観測を可能とする開発を行っている。

2. 衛星データを用いた大気、陸面(森林)相互作用の解析

さらに広範囲の森林、大気相互作用を知ることを目的として衛星データを用いたデータ解析を行っている。地球観測衛星 NOAA に搭載された AVHRR センサーデータや EOS-AQUA に搭載されている中分解能撮像分光放射計 (MODIS) や大気赤外サウンダ (AIRS) を用いる。AVHRR や MODIS では植生情報などの地表面状態の水平面分布を知ることが可能である。一方 AIRS では大気の気温、水蒸気プロファイルに加えて地表温度やオゾン分布を得ることが可能である。これらのデータを組み合わせることで森林大気間の地表面過程に関する解析を行うことを目指した研究を推進する。