磁気嵐とオーロラの研究

磁気嵐時のオーロラ (2000年11月スウェーデン北部にて)

計算機シミュレーションによるオーロラ・ブレイクアップの研究

オーロラ・ブレイクアップ時に磁気圏を流れる電流

オーロラ・ブレイクアップ直前に現れる南北オーロラと対応する磁気圏構造

南極点基地でオーロラ観測を実施中

プロフィール

氏名 海老原祐輔
所属 京都大学生存圏研究所 教授
〒611-0011 京都府宇治市五ヶ庄 [アクセスマップ]
居室 京都大学宇治キャンパス 本館 S-242H [キャンパスマップ]
電子メール ebihara#rish.kyoto-u.ac.jp   (#を@に置き換えてください)
Google Scholar Yusuke Ebihara
ORCID 0000-0002-2293-1557
Scopus Author ID 7101775978
Web of Science D-1638-2013
2023年度担当授業 プラズマ工学(工学部専門科目)、電気電子数学I(工学部専門科目)、電気電子計算工学及演習(工学部専門科目)、電磁界シミュレーション(大学院専門科目)、宇宙総合学(全学共通科目)

最近の成果・動き

 
コーラス波動は広い領域で非線形的に成長可能 【磁気嵐・主著論文】 (2020年1月)
内部磁気圏に捕捉された電子のエネルギー分布及び空間分布を求め、コーラス波動が非線形的に成長可能な領域を示しました。 [論文]

電離圏経由でも内部磁気圏にエネルギーが供給されている 【磁気嵐・主著論文】 (2019年11月)
磁気嵐の原因は地球近くに集積する熱いプラズマで、その輸送を担うのが内部磁気圏対流です。 内部磁気圏対流を駆動するエネルギー源を調べ、太陽風から内部磁気圏に直接届いたものと、電離圏経由で届いたものの二つがあることを明確化しました。 [論文] J. Geophys. Res. Space Phys. 2020年2月号の表紙

オーロラ嵐のシミュレーションに関する日本語のレビュー論文 【オーロラ・主著論文】 (2019年10月)
オーロラ嵐のシミュレーションについての日本語のレビュー論文(オーロラ爆発のしくみ)を出版しました。 [本文]

「京大先生シアター」 【広報】 (2019年3月)
京大先生シアター」で紹介されました。

オーロラ嵐のシミュレーションに関するレビュー論文 【オーロラ・主著論文】 (2019年2月)
オーロラ嵐のシミュレーションについてのレビュー論文(Simulation study of near-Earth space disturbances: 2. Auroral substorms)を出版しました。 [日本語版の要旨] [本文]

磁気嵐のシミュレーションに関するレビュー論文 【磁気嵐・主著論文】 (2019年2月)
磁気嵐のシミュレーションについてのレビュー論文(Simulation study of near-Earth space disturbances: 1. Magnetic storms)を出版しました。 [日本語版の要旨][本文]

オーロラ爆発の大きさは予測できるかもしれない 【オーロラ・主著論文】 (2019年1月)
オーロラ爆発は地震と同じように一種のエネルギー解放過程であり、その大きさを予測することは難しいと考えられていました。太陽風の条件を様々に変えたシミュレーションを行い、オーロラ爆発の大きさ(ジェット電流の強さ)は太陽風から磁気圏に流入するエネルギーにほぼ比例することが分かりました。磁気圏に流入するエネルギーの3割から9割は太陽風が持つ運動エネルギーが起源であることもわかり、惑星間空間磁場が主なエネルギー源だろうという従来の考え方を改めるきっかけになるかもしれません。 [論文]

「サイエンスリポート」 【広報】 (2018年12月)
情報・システム研究機構の「サイエンスリポート」で紹介されました。 [記事] 

サブストームと磁気嵐はなぜおこるのか? 【解説記事】 (2018年5月)
解説記事を出版しました。「地球の磁場が支配する宇宙空間を地球磁気圏と呼ぶ.地球磁気圏のダイナミクスを理解する上でサブストームと磁気嵐という擾乱現象は重要である.大規模シミュレーションによって,宇宙空間を構成する様々な要素が複雑に絡み合いながらサブストームや磁気嵐が発達していく様子が手に取るようにわかるようになってきた.複雑なものを複雑なまま捉えることで見えてきたサブストームと磁気嵐,そして地球磁気圏のダイナミクスを紹介したい.」 [記事] (Japan Geoscience Letters, Vol. 14, No. 2, 21-23)

南極点基地でオーロラ観測を開始 【南極】 (2018年4月)
南極点は半年に及ぶ冬の期間(夜の期間)に入りました。4月14日にオーロラ観測を開始し、交換したカメラが正常に動作していることを確認しました。観測データは毎日自動的に京都に送られます。観測は8月31日まで連続して行います。 [プロジェクトページ]

エネルギーは宇宙から螺旋状にやってくる 【オーロラ・主著論文】 (2017年12月)
オーロラ爆発(オーロラブレイクアップ)が起こると極域の電離圏で数百万アンペアものジェット電流が流れ、数千億ワットものエネルギーが消費されます。このエネルギーはどこからってくるのでしょうか?シミュレーションの結果を解析し、磁気圏の高緯度地方にある発電機によって太陽風のエネルギーが電磁エネルギーに変換され、地球に到達するまでの道筋を示しました。地球近傍で電磁エネルギーが内部エネルギーに一旦変換されることで、極域の狭い領域に電磁エネルギーを集中的に流し込むことが可能となるようです。 [論文]

オーロラ・サージはなぜ西に進む? 【オーロラ・主著論文】 (2017年12月)
とても明るいオーロラが西向きに移動していくことがあります。オーロラ・サージと呼ばれ、オーロラ爆発(オーロラブレイクアップ)を象徴する現象です。なぜサージは西に移動するのでしょうか?シミュレーションの結果を解析することで、明るいオーロラの周囲では電気が余り、余った電気が磁気圏のプラズマを動かし、明るいオーロラの西側で更にオーロラを強める事を示しました。真夜中付近を境に西側では上向き電流に対応した明るいオーロラが現れますが、東側では下向きに電流に対応して明るいオーロラは光りません。この非対称性が明るいオーロラが西向きに広がることの原因のようです。[論文]

11回目の南極点基地出張 【南極】 (2017年11月)
南極点基地に設置しているオーロラ観測装置のカメラを交換するため、南極点基地に出張しました。悪天候の為、途中のマクマード基地で12日間足止めされるというトラブルはありましたが、予定通りカメラを交換し、観測プログラム(ebicam)の書き換えを完了することができました。来シーズンから観測を開始します。[プロジェクトページ]

1770年に日本で見えたオーロラは何故明るい? 【オーロラ・主著論文】 (2017年10月)
1770年、日本列島各地でとても明るいオーロラが目撃されました。日本で見えるオーロラはとても暗く、肉眼で見えないものがほとんどです。ところが1770年の記録によると、オーロラの光りによって手許の文字が読めたとあり、尋常でない事が当時起きていたと考えられます。大磁気嵐時に人工衛星が観測した降り込み電子のデータを参考に、当時のオーロラの再現を試みました。極めて大量の低エネルギー電子が不変磁気緯度32度から42度の範囲に降り込むことで、当時の絵画や記述を説明できることがわかりました。極域でよく見ることができるオーロラ爆発(オーロラブレイクアップ)に匹敵する明るさを持つ低緯度オーロラは非現実的ではないようです。 [論文]

新聞・雑誌・ウェブニュース等

2017年9月28日 「オーロラ・サブストームに関する 新しいメカニズムの提唱」(科研費NEWS 2017 Vol.2)
2016年8月28日 「解明されたオーロラ爆発のなぞ」(パリティ2016年9月号)
2016年4月7日 「宇宙を良く知り共存へ」(読売新聞13面)
2016年2月23日 「爆発解明へ 発想転換」(読売新聞18面)
2016年2月3日 Bright night lights, big science」(Student Science・アメリカ)
2015年12月23日 「オーロラ爆発原因はプラズマ発電」(産経新聞 京阪奈・京都市版)
2015年12月23日 「オーロラ爆発解明 大規模停電誘発 発生予測へ期待」(京都新聞)
2015年12月29日 AURORAL BREAKUP EXPLAINED BY SCIENTISTS」(Capital Wired・アメリカ)
2015年12月26日 Ratselhafte Ausbruche bei Polarlichtern wohl aufgeklart」(ShortNews.de・ドイツ)
2015年12月25日 日本の研究チーム、オーロラの「謎」を解明する」(WIRED日本版)
2015年12月24日 Aurore polari, risolto il mistero sulle loro esplosioni」(Focus.it・イタリア)
2015年12月21日 Mystery of swirling Northern Lights finally solved」(WIRED UK・イギリス)
2015年12月22日 Polarlicht: Ratselhafte Ausbruche aufgeklart」(scinexx.de・ドイツ)
2015年12月21日 Un modello fisico completo per le aurore polari」(Le Scienze・イタリア)
2015年12月21日 Японские ученые разгадали тайну вспышек северного сияния」(インターファックス・ロシア)
2015年12月21日 ченые нашли точную причину появления северных сияний Читать полностью」(TUT.BY・ベラルーシ)
2015年12月21日 Разкриха тайната на внезапните изригвания на Полярното сияние」(Znanya TV・ブルガリア)
2015年12月21日 Auroral mystery solved: Sudden bursts caused by swirling charged particles」(PHYS.ORG・アメリカ)

教科書・専門書等

2019年12月 シリーズ宇宙総合学2 人類は宇宙をどう見てきたか
(京都大学宇宙総合学宇研究ユニット編,第3章オーロラ担当, 朝倉書店)
2016年11月 Waves, Particles, and Storms in Geospace
(Balasisほか編,第13章担当, Oxford University Press)
2016年8月 Space Weather Fundamentals」(Khazanovほか編, 第9章「Ring Current」pp.149-172担当, CRC Press)
2016年7月 低温環境の科学事典」(1-11章「磁気嵐」担当, 朝倉書店)

解説

なぜオーロラ爆発が起こるのか?
なぜ磁気嵐が起こるのか?

研究テーマ

オーロラ嵐/サブストームの研究

オーロラが急に明るく光り出す現象をオーロラ嵐(サブストーム)と呼びます。 このとき超高層大気や地球近くの宇宙空間では大電流が流れ始め、磁気の乱れや高エネルギー粒子の注入など大変動が見られます。 オーロラ嵐が起こる原因について活発な議論が交わされていますが良く分かっていません。 シミュレーションを使ってオーロラ嵐/サブストームを再現し、シミュレーションの結果を詳しく解析することでオーロラ嵐を理解しようという新しいアプローチを展開しています。

磁気嵐/リングカレントの研究 [解説]

地磁気が数日間乱れる現象を磁気嵐と呼びます。 地磁気の乱れは主に地球を取り囲むように流れるリングカレントが発達するために起こります。 リングカレントは主に数keVから数100 keVのエネルギーを持つイオンが作るため、 磁気嵐を理解するためにはこれらのイオンの動きを理解することが重要です。 磁気嵐の発達過程をイオンの流入、加速、輸送、消失過程ととらえ、シミュレーションと観測データを比較することで磁気嵐の研究を推進しています。

放射線帯の研究

プラズマ圏の研究

オーロラの研究

サブオーロラ帯の研究

磁気圏物質循環の研究

南極点基地でオーロラ観測

計算機シミュレーション