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第511回生存圏シンポジウム
第9回ファインバブル学会連合シンポジウム

開催日時 2023/10/18(水曜日) 13:00~
開催場所 京都大学宇治キャンパス きはだホール
申請代表者 寺坂宏一(慶応義塾大学応用科学科)
所内担当者 上田義勝(京都大学生存圏研究所)

概要

ファインバブル学会連合シンポジウムは、化学工学会、日本混相流学会、日本ソノケミストリー学会などの様々な研究組織との連合であり、中でも令和4年度から京都大学微細気泡研究会(代表 上田義勝)とも協力してきている。ファインバブルは工学だけでなく、環境や医療、農学などの応用利用が幅広いため分野横断型研究が多い。一方で、基礎理論について充実した議論を行える学会がこれまで無かったため、ファインバブル学会連合としての役割が非常に重要になりつつある。そのため、生存圏シンポジウムとして開催する事で、より多くの研究者との活発な議論を行う。

目的と具体的な内容

概要に述べたように、様々な分野横断型研究の可能性があるファインバブル研究についての議論を活発に行う事を目的としている。今回はテーマとして、「ファインバブルテクノロジーとイノベーションの融合:持続可能な社会への新たなる扉」を掲げ、下記の研究者からの講演を依頼した。講演概要とともに記載する。

「種々の外部刺激に対するウルトラファインバブルの高安定性」
新潟大学 自然科学系 牛田 晃臣先生

ウルトラファインバブルは静置条件における液中における高安定性が報告されている.これは通常サイズの気泡の場合とは大きく異なる現象であり,ウルトラファインバブルの特性と捉えることができる.一方で,実用条件においては様々な外部刺激を受けた状態で使用されることがほとんどであり,このような外部刺激に対する安定性を明らかにすることは有用である.本発表では,洗浄への応用を踏まえた外部刺激を与えた場合のウルトラファインバブルの安定性について説明する.

「微細気泡/水界面におけるガス成分の気液間物質移動現象 ~微細気泡流の環境技術への応用可能性について~」
京都大学 エネルギー科学研究科 日下 英史先生

エアレーション法(バブリング)は、様々な産業分野でガス溶解や水中揮発分の除去に使われ、気液間物質移動を利活用する手法とされている。しかし、気液間に存在する移動抵抗がガス成分の移動を制限し、反応効率やエネルギー効率の低さが課題となっている。これを克服するために開発されているマイクロ/ナノバブリングとその関連システムが環境関連分野において注目されている。この技術は、微小気泡を発生させることで気液間物質移動の効率を向上させ、移動抵抗を軽減する特長があるが、効率を向上させることでより持続可能な環境対策につながると期待される。本講演では、マイクロ/ナノバブリングの工学的特徴とその応用可能性について言及する。

「水中プラズマによるファインバブル生成」
東北大学 流体科学研究所 佐藤岳彦先生

ファインバブルの生成は様々な手法が開発されているが,本講演では水中プラズマにより生成される気泡の生成過程や気泡内のガス種の計測などについて紹介する.秒速30 kmに達する水中二次ストリーマや微小域で進展を繰り返す負極性ストリーマの進展過程,ストリーマ進展後に形成されるストリーマガスチャネルの生成消滅過程とガスチャネル崩壊後に生成される微細な気泡の挙動,水素ガスが気泡内に包含されていることの検証などについて説明する.

「電解バブルの光学計測~電気化学計測からは得られない情報~」
京都大学 エネルギー理工学研究所 中嶋 隆先生

余剰エネルギーの有効利用として有力視されているアルカリ水電解水素製造においては、電極面上で発生する水素/酸素バブルが電解反応を阻害することなく速やかに電極面から離脱することが重要である。我々は、個々の電解バブルを高い空間・時間分解能で観測する光学計測システムを開発した。この光学計測システムの最大の特長は、計測場所を変えることなく、広範囲にわたる局所情報を同時に得られることである。本計測システムとレーザーを用いることによって得られた様々な知見を紹介する。

「バブルジェネレータから考えるファインバブル技術開発」
鹿児島大学 工学部 五島 崇先生

日本発のファインバブル技術は国際標準化により世界的な普及が進み研究開発や産業利用が盛んである。ファインバブルの機能を最大限に活用するためには、バブルジェネレータの開発が鍵となる。本講演では、10種類を超える方式の異なるファインバブルジェネレータの開発に取り組む中で見えてきたファインバブル技術の課題や可能性について述べる。

生存圏科学の発展や関連コミュニティの形成への貢献

簡単には水と空気だけで生成利用が可能なファインバブル技術は、一般的にどこでも利用できる事から、非常に幅広い研究分野にまたがる基盤技術として発展してきている。特に生存圏科学においては環境利用に関して注目しており、人類生活圏における衛生的な利用の他、洗浄技術としても既に適用済みである。
 一方で、一般利用の際には大きく問題にならないが、研究としては気泡と水以外の不純物が大きく問題になる事が多い。基礎研究データを集める際のこの不純物に対しての影響を考える際には、多岐にわたる計測を行いながら、気泡としての基礎特性を見定める必要が大きい。これらの基礎データを集める際には、今回生存圏シンポとして開催した様に、非常に広い分野の研究者が集まり、忌憚なく意見を交えることでその研究に深みが増し、信頼性も向上する。本シンポジウム開催により、この基礎研究進展のための議論が非常に活発に行えた意義は非常に大きい。また、新たな研究分野の広がりの他、多数の企業からも参加があった事から、応用研究事例としての広がりもある。
 生存圏科学発展の一つのテーマとして、本シンポジウム開催が出来た事は非常に意義あるものであり、今後のファインバブル研究と生存圏科学とがつながる重要なシンポジウムとなった。

プログラム

13:00 – 13:05 1.開会の挨拶
ファインバブル学会連合理事長 慶應義塾大学 寺坂宏一 先生
[招待講演:2-3] 司会:高知工業高等専門学校 秦 隆志
13:05 – 13:45 2.「種々の外部刺激に対するウルトラファインバブルの高安定性」
新潟大学 自然科学系 牛田 晃臣先生
13:45 – 14:25 3.「微細気泡/水界面におけるガス成分の気液間物質移動現象 
          ~微細気泡流の環境技術への応用可能性について~」
京都大学 エネルギー科学研究科 日下 英史先生
14:25 – 14:45 休憩
[招待講演:4-6] 司会:名古屋大学 安田 啓司 
14:45 – 15:25 4.「水中プラズマによるファインバブル生成」
東北大学 流体科学研究所 佐藤岳彦先生
15:25 – 16:05 5.「電解バブルの光学計測~電気化学計測からは得られない情報~」
京都大学 エネルギー理工学研究所 中嶋 隆先生
16:05 – 16:45 6.「バブルジェネレータから考えるファインバブル技術開発」
鹿児島大学 工学部 五島 崇先生
16:45 – 17:00 7. 閉会挨拶
京都大学 上田義勝
17:30 – 情報交換会(宇治おうばくプラザにて)
第511回生存圏シンポジウム風景-1 第511回生存圏シンポジウム風景-2

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2023年4月5日作成/10月20日更新