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第459回生存圏シンポジウム
太陽地球系物理学分野のデータ解析手法、ツールの理解と応用

開催日時 2021(令和3)年9月29日(火)15:40~30日(木)12:25
開催場所 オンライン開催
主催者 田中良昌 (情報・システム研究機構データサイエンス共闘利用基盤施設)
申請代表者 田中良昌 (情報・システム研究機構データサイエンス共闘利用基盤施設)
所内担当者 山本衛 (京都大学生存圏研究所レーダー大気圏科学分野)
橋口浩之 (京都大学生存圏研究所大気圏精測診断分野)
関連ミッション ミッション3 宇宙生存環境
関連分野 太陽地球系物理学、地球惑星電磁気学、情報科学。

Webサイト: http://www.iugonet.org/workshop/20210929?lang=ja

概要

本研究会では、太陽地球系物理学分野の研究者・学生、データ所有者、データベース・解析ツール開発者が参加し、お互いの知識を共有し、各々の研究者にとって最適な解析方法、研究フローを見出すことを目的とする。そのために、参加者が各自の研究課題を自由に議論できる「議論セッション」を設け、各々が直面している問題の解決を目指す。また、参加者が主体的にデータ解析手法を学べるよう、解析ツールを用いた「解析講習セッション」を開催する。

目的と具体的な内容

今年度も昨年度と同様、9月28~30日に本研究集会と関連する「MTI研究集会」、「STE現象報告会」、「宇宙空間からの地球超高層大気観測に関する研究会」の3つの研究集会と合同でオンライン開催した。本研究集会では、合同研究集会の参加者が主に利用している太陽地球系物理学分野のデータ解析手法・ツールに焦点を当てて講演、議論、解析講習を行い、各自が直面している課題を解決したり、最適な解析方法・研究フローを構築することを目標とした。

9月29日午後には、4研究集会合同のポスターセッションが開催され、15件の発表が行われた。9月30日には、口頭セッションが開催され、59名が参加した。セッション1では、3名の大学院生による招待講演が行われ、セッション2、3では、昨年度に引き続き議論セッションを開催した。議論セッションでは、修士の学生7名に初めに約5分の研究紹介をしていただき、その後小部屋に分かれて約1時間それぞれの研究テーマに関して議論した。各小部屋には、進行役のアドバイザーと議論を正しく誘導するファシリテータを付け、各研究課題の解決に向けた議論を行った。各々の研究課題の問題点について深い議論をすることで解決方針を見出すなど、概ね順調に進行したが、一部、学生にとって議論がスムーズに進まなかった事例もあった。次回以降、学生の指導教員にも同セッションに参加を依頼することで、より高い効果が得られることが期待される。

セッション4では、太陽地球系物理学分野で広く利用されているデータ解析ソフトウェアであるIDL、MATLAB、及び、IDLをベースとした超高層大気データの統合解析ツール「SPEDAS」の講習セッションを並行開催し、多くの学生や若手研究者が参加した。IDL講習では、Harris Geospatial株式会社の現役エンジニアの方に講師を依頼し、IDLの中上級者向けの講習をしていただいた。講習は、参加者がその場でツールを使って解析をしながら適宜質問をし、それに回答していく形で勧められた。プログラミングの基礎から各自の研究への応用に関して、幅広く質問・議論が行われた。

なお、本研究集会で利用したデータ解析講習資料はIUGONETウェブサイトで公開している(http://www.iugonet.org/workshop/20210929)。

生存圏科学の発展や関連コミュニティの形成への貢献

本合同研究集会は、太陽地球系物理学、特に、宇宙空間と大気圏の間にある超高層大気物理学に関連する研究集会であり、生存圏研究所が推進している「環境診断・循環機能制御」と「宇宙生存環境」のミッションに関連している。我々の研究集会では、講演、議論、講習を通じて、これらの研究領域で広く利用されている解析手法・ツールの情報を参加者で共有した。これにより、研究成果創出の迅速化・高度化、上記研究領域の深い理解に繋がり、さらに、領域を跨ぐ共同研究に発展することが期待される。

また、学生、若手研究者の育成を目的として、本研究分野で広く利用されている解析ソフトウェアであるIDL、MATLAB、及び、IDLをベースとした統合解析ツール「SPEDAS」を実際に使った解析講習セッションを実施した。これらのツールは、生存圏データベースに登録されている信楽MUレーダー、赤道大気レーダーデータを含む超高層大気データ、並びに、太陽、惑星間空間、惑星データ等の総合解析に広く利用されており、生存圏科学のデータ利用の促進、共同研究の発展に貢献するものである。さらに、議論セッションでは、修士の学生7名に参加・発表していただき、各自の研究課題の行き詰まっている問題に対して解決策を発見するための議論を行った。コロナ禍で他機関の研究者との議論が困難な状況の中、多くの参加者と自由な議論、コミュニケーションを取る場を提供でき、共同研究の促進、コミュニティの形成に貢献できたと考えている。

プログラム

9月29日(水)

15:40–18:00 4集会合同ポスターセッション

9月30日(木)

  セッション1(招待講演)
【座長:田中良昌(極地研)】
10:00–10:20 市民科学の促進を意識したオーロラのデジタルカメラ観測の活用例
〇南條壮汰(電通大)、細川敬祐、Olivier Staiger
10:20–10:40 地上-衛星複合観測に基づくIPDPタイプEMIC波動の発生領域と周波数上昇に関する解析
〇平井あすか(東北大)、土屋史紀、小原隆博、笠羽康正、加藤雄人、三澤浩昭、塩川和夫、三好由純、Chae-Woo Jun、栗田怜、Martin Connors、Aaron Hendry、新堀淳樹、大塚雄一、津川卓也、西岡未知
10:40–11:00 内部磁気圏衛星の電離圏マッピングと大気光変動率の計算
〇川合航輝(名大ISEE)、塩川和夫、大塚雄一、三好由純
  セッション2
【座長:新堀淳樹(名大ISEE)】
11:05–11:25

研究紹介(各5分)

  • HF帯電波伝搬のレイトレーシング
    〇佐藤駿(千葉大)、中田裕之、穂積 Kornyanat、斎藤享、大矢浩代
  • 全天カメラを用いた雲底高度および雲量の推定
    〇根本敦哉(千葉大)、大矢浩代、鷹野敏明、高村民雄、中田裕之
  • ARTEMISによる月面からのAuger電子/光電子ビームの観測と月面電位の推測
    〇加藤正久(京大)、原田裕己、Shaosui Xu、Andrew R. Poppe、Jasper S. Halekas、三宅洋平、臼井英之、西野真木
  • Na 飽和分光実験におけるスペクトル構造の理論的研究
    〇兵藤初美(電通大)、津田卓雄、 渡部蓮、胡錦怡、野澤悟徳、川端哲也、斎藤徳人、川原琢也
11:25–12:25

小部屋に分かれてディスカッション(パラレル)

  • 発表者:佐藤駿(千葉大)、アドバイザー:阿部修司(九大ICSWSE)、ファシリテーター:西谷望(名大ISEE)
  • 発表者:根本敦哉(千葉大)、アドバイザー:今城峻(京大)、ファシリテーター:藤本晶子(九工大)
  • 発表者:加藤正久(京大)、アドバイザー:新堀淳樹(名大ISEE)、ファシリテーター:桂華邦裕(東大)
  • 発表者:兵藤初美(電通大)、アドバイザー:田中良昌(極地研)、ファシリテーター:江尻省(極地研)
12:25–13:30 昼休み
  セッション3
【座長:阿部修司(九大ICSWSE)】
13:30–13:45

研究紹介(各5分)

  • Poleward Boundary Intensification における電子加速メカニズムを再現する3次元流体シミュレータの開発
    〇樋口颯人(九大)、吉川顕正
  • VLF/LF帯標準電波で観測されたD領域電離圏変動の統計解析
    〇野﨑佑磨(千葉大)、大矢浩代、土屋史紀、中田裕之
  • VLF/LF帯標準電波を用いた太陽フレア時のD領域電離圏変動の研究
    〇中山雅晴(千葉大)、大矢浩代、土屋史紀、山下幸三、高橋幸弘、中田裕之
13:45–14:45

小部屋に分かれてディスカッション(パラレル)

  • 発表者:樋口颯人(九大)、アドバイザー:田中良昌(極地研)、ファシリテーター:中田裕之(千葉大)
  • 発表者:野﨑佑磨(千葉大)、アドバイザー:今城峻(京大)、ファシリテーター:大山伸一郎(名大ISEE)
  • 発表者:中山雅晴(千葉大)、アドバイザー:新堀淳樹(名大ISEE)、ファシリテーター:津田 卓雄(電通大)
15:00–16:30 解析講習セッション
部屋A:IDL講習(講師:Harris Geospatial株式会社)
部屋B:SPEDAS講習(講師:IUGONET)
部屋C:MATLAB講習(講師:IUGONET)

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2021年7月20日作成,2021年10月20日更新