第287回定例オープンセミナー
電磁環境と健康の国際動向
開催日時 | 2022(令和4)年9月28日(水) 12:30–13:20 |
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開催場所 | オンライン(Zoom) |
発表者 | 宮越順二(京都大学生存圏研究所・特任教授) |
関連ミッション |
ミッション5 高品位生存圏 |
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要旨
我々の生活環境には種々の電磁波が飛び交っている。特に、世界中で携帯電話や無線LANの利用、携帯電話基地局の新設などが急速に進展したことが主な要因となっている。さらに近未来社会では、多種多様な電磁環境は、ますます増加の一途をたどるであろう。電磁環境は目に見えないこともあり、電磁波の健康への影響について不安を抱いている人が多い。ここでは、高周波の電磁環境について世界保健機関(WHO)や国際がん研究機関(IARC)をはじめとした、国際機関の健康評価活動を紹介する。
まず、非電離の高周波について、健康影響評価の経緯を述べる。1990年代前半に、(極)低周波の高圧送電線と小児白血病の研究が高まったこともあり、WHOは、1996年に国際電磁波プロジェクト(International EMF Project)を立ち上げた。電波と健康は、WHOの放射線担当部門が行っている。国際的な機関でWHOの他に強く関与しているのは、IARC、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)などがある。IARCは地球上に存在する物質や環境の発がん性を評価する機関であり、ICNIRPは非電離放射線専門の規制を国際的に提言する機関である。
電磁環境の生体影響を研究する主な手法としては、(1)ヒトの疫学研究やヒトのボランティア研究、(2)動物実験研究、および(3)細胞実験研究が行われている。高周波電磁環境に対するIARCの発がん性評価会議(2011年)については、WHOから招請され、筆者も評価委員(ワーキンググループ)として参加した。会議の結果として、長時間にわたる携帯電話使用者において、脳腫瘍(神経膠腫や聴神経腫瘍)の増加を示唆する疫学研究報告を重視して、ワーキンググループの高周波発がん性総合評価は、「グループ2B(Possibly carcinogenic to humans)」(発がん性があるかもしれない)と決定した。WHOは、この評価会からかなり時間を擁しているが、高周波による発がん性を含む健康全体の影響評価について、環境健康クライテリアの作成を進めている。
通信や医療、さらにEVや近い将来のワイヤレスエネルギー伝送技術をはじめとして、電磁波利用は高まるばかりである。増加の一途をたどるこれからの電磁環境を考えると、電磁波の安全性を科学的なデータから評価・判断するため、未解明な部分については、生命科学の先端技術を駆使して研究を推進する必要がある。この分野は、特に、生物・医学面、工学面での密接な研究協力体制が重要であることを付け加えて置きたい。
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2022年9月2日作成,2022年9月14日更新