第211回定例オープンセミナー
植物における微小管ネットワークの役割
開催日時 | 2016(平成28)年9月28日(水) 12:30–13:20 |
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開催場所 | 総合研究実験1号棟4階 HW401 |
題目 |
植物における微小管ネットワークの役割 Roles of microtubule networks in plant cells |
発表者 | 濱田隆宏(東京大学大学院総合文化研究科・助教) |
関連ミッション |
ミッション5 高品位生存圏 |
要旨
植物において微小管は染色体の分配、細胞質分裂、細胞分裂方向の制御、細胞伸長方向の制御など多様な役割を果たしている。微小管の周辺に集積する微小管付随タンパク質群(MAPs)は表層微小管、分裂準備帯、紡錘体、フラグモプラストと呼ばれる微小管構造物を構築・制御している。そのため植物MAPsの機能解析により、植物における微小管ネットワークの機能や構築メカニズムを調べることができる。
シロイヌナズナ培養細胞より精製したMAPs画分を用いて、プロテオーム解析を行った。その結果、1500種類以上のタンパク質を同定した。その中には多くの機能未知タンパク質が含まれており、イメージング解析によるスクリーニングを行うことで6種類の新規MAPsファミリーを同定に成功した。さらに予想外なことにMAPs画分には多くのRNA結合タンパク質やオルガネラタンパク質、代謝酵素などが含まれていた。そこで実際に細胞内でこれらのオルガネラやRNA顆粒が微小管と相互作用しているかを調べると、ゴルジ体・ミトコンドリア・ペルオキシソームなどのオルガネラやRNA顆粒がアクチン繊維依存的に運ばれ、表層微小管に係留されることを明らかにした。特に微小管は小胞体を細胞表層に係留させており、表層微小管が密な小胞体ネットワークの構築に必要であることを明らかにした。これらの観察により、植物の表層にはオルガネラ集積領域と呼べるような場所が形成されており、微小管も主要な構成因子の一つであることが示唆された。
現在、オルガネラ集積領域における微小管の役割を明らかにするため、MAPs画分に含まれていた1次代謝酵素やsmall RNA生合成因子に関する研究を行っている。本セミナーでは、植物の微小管ネットワークが細胞内の代謝物合成やRNA 代謝、更には核内クロマチン構造変化に関わる可能性について、今後の展開を含め議論したい。
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2016年9月23日作成