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第206回定例オープンセミナー
A study of long-term variation in the upper atmosphere using the IUGONET data analysis system

開催日時 2016(平成28)年6月22日(水) 12:30‐13:20
開催場所 総合研究実験1号棟5階 HW525
題目 A study of long-term variation in the upper atmosphere using the IUGONET data analysis system
IUGONETデータ解析システムを用いた超高層大気の長期変動研究
発表者 新堀淳樹(京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)
関連ミッション ミッション1 環境診断・循環機能制御

要旨

地球大気は、温度構造によって下層から対流圏(~12 km)、成層圏(12–50 km)、中間圏(50–90 km)、及び熱圏(90 km~)に区分される。また、熱圏とほぼ同じ領域に重なるようにして電離圏(80–1000 km)が存在する。これらの大気層で観測されるオーロラ、大気光といった様々な諸現象は、太陽から地球大気に向かって絶えず入射してくる太陽放射や太陽風のエネルギーを駆動源としている。

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図1: 高度500 kmにまでの地球大気中で観測される諸現象と各大気層の位置関係。横軸は緯度、縦軸は高度を示す[IUGONETパンフレットから抜粋]。

地球が受け取る太陽放射エネルギーは、極域で最小、赤道域で最大となるため、約20km以下の赤道大気では活発な積雲対流現象が引き起こされる。この大気擾乱を起源とする大気重力波が上層大気へ運動量を輸送し、力学的摩擦効果によって中間圏・下部熱圏領域に至る大気大循環や温度構造を規定することがこれまでの研究から明らかにされている。一方、太陽風-磁気圏相互作用によって生み出された電磁エネルギーや荷電粒子の降下が極域の超高層大気に集中する。このように地球大気に入射する太陽エネルギーは、地球をとりまく空間(大気圏・電離圏・磁気圏)の中をその形態を変えながら伝搬し、多様な物理現象を引き起こす。また、地球大気は、異なる大気層間の結合が強いグローバルな複合系をなしており、そこで生じる変動現象の物理過程を解き明かすためにはこれらの大気層の間の物質輸送や運動量輸送などの相互作用の実体を調査する必要がある。したがって、太陽活動や地球温暖化などに伴う超高層大気の長期変動とその物理機構を理解するためには,全球規模の地上観測ネットワークから長期的に得られた様々な観測データを組み合わせた分野間にまたがる総合解析を行うことが必要不可欠である。

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図2: IUGONETプロジェクトの概念図。IUGONETでは、横断検索のための超高層大気観測データのメタデータデータベースを構築し、それをインターネット上に共有することで各観測データの相互参照を可能にしている[Hayashi et al., 2013]。

そのような背景の下、2009年度から開始された大学間連携プロジェクト「Inter-university Upper atmosphere Global Observation NETwork: IUGONET」では、図2に示すように観測データからメタデータを抽出してインターネット上で広く共有するシステムを構築することで、各研究機関が長期にわたって蓄積してきた種々の地上観測データの相互参照をできるようにした。さらに、多種多様の観測データの描画や相関解析を容易に行えるようにするための解析ソフトウェアの開発を行ってきた。 本セミナーでは、IUGONETプロジェクトの概要とそのプロダクトの使い方について紹介する。

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2016年6月20日作成