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第165回定例オープンセミナー資料

開催日時 2013/06/19(水曜日)
題目 循環型木質資源の開発と地域材の利用
Development in Sustainable Wood-Based Resources and Utilization of Local Timbers
発表者 鈴木遥 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)
関連ミッション ミッション 4 (循環型資源・材料開発)

要旨

木質資源は再生産可能で、加工にかかるエネルギーが他の資源に比べて少ない。このため木質資源は、地球環境との持続的な相互関係のもとに社会を発展させる 上で極めて有用な資源として認識され、注目されている。現在は、特に工業的な利用を中心にして、木質資源を有効に利用することにより、環境負荷の少ない資 源利用を目指す方向で技術開発が進められている。

近年の木質資源に関する技術開発の方向性を決定している認識の一つは、「循環」に対する認識である。1997 年の COP3 では、先進国が温暖化防止に向けて具体的に目標を定めた京都議定書が採択された。また、その後、廃棄物の処理やリサイクルに関する各種の政策や法律が整備 されてきた。そして、天然資源の消費と廃棄物の発生を抑制し、廃棄物を適正に管理・処理する、さらに再利用を進めるという循環型資源利用への認識が広まっ てきた。こうした社会的文脈の中で、木質資源の開発もまた、循環に対する認識を組み込みながら進められてきた。

しかしながら、木質資源の開発にとっての「循環」について、これまで十分な考察は行われてきていないのではないだろうか。木質資源の循環は、概して、森林 →木材→住宅建材・家具等→解体材・廃材等→再原料化→焼却・腐朽→二酸化炭素化→森林、という物質としての木質資源の循環を軸に認識されているといえ る。一方で、木質資源を古くから利用してきた我が国では、これを利用するための社会・文化が歴史的に構築されてきている。木質資源の物質循環を支える社 会・文化をいかに認識し、取り込んでゆくかという点は、木質資源研究として循環への認識を深化させ、木質資源研究から新しい循環型社会のモデルのひとつを 提案する視点になりうるのではないだろうか。

本発表では、循環を切り口に木質資源に関する研究を再整理し、地域材に着目する自身の研究視点とこれまでの研究成果を紹介する。