第120回定例オープンセミナー資料
開催日時 | 2010/09/15(水曜日) |
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題目 |
超高感度NMRによるタンパク質と木質バイオマスの構造生物学 Structural biology of protein and wood biomass by NMR with super high sensitivity |
発表者 | 片平正人 (京都大学エネルギー理工学研究所・教授) |
関連ミッション |
ミッション 2 (太陽エネルギー変換・利用) |
要旨
NMR は、生体分子の溶液中における化学構造及び立体構造を原子レベルの分解能で決定できる唯一の手段である。そして超高感度検出器クライオプローブの出現によって、NMR 法の適用範囲は大きく広がった。本セミナーでは、NMR 法を用いた我々の研究成果を 2 点紹介する。
抗 HIV 活性を有する APOBEC3G タンパク質に関して、立体構造及び DNA との相互作用様式の決定を行った。さらに NMR シグナルを用いる事で酵素反応をリアルタイムでモニタリングする事に成功した(EMBO J., 2009)。そしてこのモニタリングから、APOBEC3G タンパク質が DNA 上を極性を持ってスライディングしている事が示唆された。
生存研の渡辺先生との共同研究で、木質バイオマスを溶液 NMR 法によって丸ごと解析する事をスタートさせた。適切な前処理とクライオプローブを組み合わせる事で、リグニン等のヘテロな有用物質に関し、化学構造(分子構造)・量比・化学構造変換等に関する情報が得られつつある。
図 (左上)A3G タンパク質の立体構造、(左下)脱アミノ基によるシトシンからウラシルへの塩基変換、(右)塩基変換反応のリアルタイムモニタリング。