木質を含め植物細胞壁の半分は、セルロースでできています。現在の地球上で年間数千億トンものセルロースが、植物に限らず多様な生物により合成されているという事実は、進化の過程でセルロース合成能を獲得した生物がその後の生存競争を優位に進めたことを意味しています。しかも陸上植物が出現した頃にはすでに地球に現れており、それから現在まで存続し、繁茂しているということは、地球に素晴らしくフィットした高分子です。
私はもともとセルロースの高分子構造解析で学位をとっており、高分子量のセルロースを水系溶媒に放っても、凝集とならずに微小繊維を作ってしまうセルロース合成酵素のメカニズムが、不思議でなりませんでした。そこで学位取得後、膜タンパク質の生化学と構造生物学の研究室でポスドクとして経験を積み、セルロースの結晶構造の分かる膜タンパク質研究者として、セルロース生合成研究を行っています。
「森林科学で膜タンパク質?」と思うかもしれませんが、膜タンパク質がなければ、セルロースはできないし、ヘミセルロースもできないし、モノリグノールだって細胞外へ輸送できず、木化できません。木材の細胞壁形成の具体的な様子を分子レベルで見たいのならば、膜タンパク質は重要な研究対象です。また、視野を広げて、チャネルやトランスポーターなどの色々な膜タンパク質(の研究者)の働きぶりを見れば、膜タンパク質というのは重要かつ面白い研究テーマだと分かってもらえると思います(膜タンパク質が絡んだノーベル賞受賞対象は少なくありません。数えてみて下さい)。
森林科学ならではの膜タンパク質研究を、大学院から始めてみませんか? ご連絡お待ちしています。
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