研究内容

ムラサキにおけるシコニン生合成経路とその他の代謝産物(画像

 シコニンは右下に示した。この他、ムラサキないしその培養細胞において、相当量の蓄積が認められる化合物を枠で囲って示している。シコニンの直接の前駆体は、フェニルアラニンに由来するp-hydroxybenzoic acid (PHB)と、アセチルCoAに由来するgeranyl diphosphate (GPP)である。シコニン生合成の重要な調節段階としては、この2つの化合物のカップリングを行うPHB: geranyltransferase が知られる。このステップが光やアンモニウムイオンなどで阻害されると、過剰となったPHBは配当体として細胞の液胞内に貯められる。律速段階はナフタレン環の形成反応にもありそうであることが予測されている。即ち、geranyltransferase がきちんと発現していても、その後の閉環反応がうまく進行しないと、ゲラニル側鎖内でフラン環を形成したdihydroechinofuranという化合物が形成され、細胞外に分泌される。この化合物は、場合によってはかなり大量に生産されることがあるが、非常に不安定で容易に分解し、細胞の処理の方法によっては検出されないこともある。
 右上の化合物は、長崎大学の山本浩文博士によってムラサキ培養細胞から見出された、コーヒー酸のテトラマーlithospermic acid B。この化合物も興味深い生理活性を示す。

さらに詳しくお知りになりたい方は、以下のレビューを参照されたい。
K. Yazaki, H. Matsuoka, T. Ujihara, and F. Sato (1999) Shikonin biosynthesis in Lithospermum erythrorhizon: Light-induced negative regulation of secondary metabolism. Plant Biotechnology, 16, 335-342.
K. Yazaki (2001) Root-Specific Production of Secondary Metabolites: Regulation of Shikonin Biosynthesis by Light in Lithospermum erythrorhizon. Natural Medicines, 55, 49-54.