高梨功次郎のプロフィール

高山マメ科植物と共生する根粒菌のゲノムの伝播と進化

マメ科植物は自身が共生する根粒菌を他種の根粒菌や病原菌と厳密に区別しています。その区別の判断基準の多くは、根粒菌が有する共生遺伝子群の型にあります。根粒菌ゲノムには共生に関連する遺伝子群が密集した、共生アイランドという領域があります。この共生アイランドが非根粒菌ゲノムに水平伝播すると、その非根粒菌は共生能を獲得することが知られています。マメ科植物がその生育地を拡大させた先でも新しい根粒菌と共生できるのは、元の生育地の根粒菌の共生アイランドが生育拡大先の土壌細菌に水平伝播するため、と考えられていますが、野生集団での水平伝播の実態は実のところ全然わかっていません。
そのマメ科植物の分布変遷に伴う共生根粒菌ゲノムの伝搬の実態を探るため、高山マメ科植物をモデルとして研究を進めています。現在の日本の高山植物は北極圏から南下した植物に起源すること、および第四紀の最終氷期(約2万年前)以前には日本各地の高山に地理的に隔離にされたことが推測されています。そのため、遷移の時期と方向を推定することが出来ます。高山マメ科植物に共生する根粒菌のゲノム構造を調べることで、宿主植物の移動と共生アイランドの水平伝播の関係を解明したいと考えています。自然界における共生関係パートナーがどのように確立されているのか、その過程が明らかになるかもしれません。


高山に咲くマメ科植物

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