高梨功次郎のプロフィール

マメ科植物の根粒における代謝産物の動態

ダイズに代表されるマメ科植物は世界で年間3億トン以上生産されており、食糧や生物肥料として非常に重要な作物となっています。マメ科植物はその根において窒素固定細菌(根粒菌)と共生系を確立し、高効率の窒素固定器官である根粒を形成することが出来ます。そのためマメ科植物は乾燥重量当たり40% ものタンパク質を蓄積し(ダイズが畑の肉と言われるのはこのためです)、人類を支える窒素源として大きな役割を有しています。
この共生窒素固定系の確立に際して、マメ科植物は自身が共生する根粒菌を他種の根粒菌や病原菌と厳密に区別する機構を有しています。さらに、根粒内において根粒菌が感染する細胞と非感染細胞それぞれの特異的分化と数も制御しています。それらの制御には、植物根からのフラボノイド分泌、根粒菌からのシグナル分子の放出、植物ホルモンによる根粒の発達、根粒組織内での窒素化合物と炭素源の交換など、様々な代謝産物が複雑に関わっています。本研究では、根粒内における代謝産物の輸送・蓄積機構の解明を目指して、まずミヤコグサの根粒から3つの組織を単離し、組織特異的マイクロアレイ解析を行いました【1】。組織特異的に発現している遺伝子をまとめて、現在、その中から根粒感染領域で発現している輸送体の解析を中心に進めており、マメ科植物と根粒菌の間でどのような代謝産物の交換が行われているか、を一歩ずつ解明したいと考えています【2、3】。

参考文献
1、Takanashi K,, Takahashi H., Sakurai N., Sugiyama A., Suzuki H., Shibata D., Nakazono M., Yazaki K. Tissue-specific transcriptome analysis in nodules of Lotus japonicus. Mol. Plant-Microbe Interact., (2012) 25(7):869-876.
2、Takanashi K., Sugiyama A., Sato S., Tabata S., Yazaki K. LjABCB1, an ATP-binding cassette protein specifically induced in uninfected cells of Lotus japonicus nodules. J. Plant Physiol., (2012) 169:322-326.
3、Takanashi K., Yokosho K., Saeki K., Sugiyama A., Sato S., Tabata S., Ma J.F., Yazaki K. LjMATE1 - a citrate transporter responsible for iron supply to nodule infection zone of Lotus japonicus. Plant Cell Physiol., (2013) 54:585-594.


ミヤコグサとその根粒

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