当センターでは、MUレーダーに境界層レーダー、気象レーダー、 ラジオゾンデ、雨量計などを組み合わせた 「マルチレーダーシステム」により、 我々の生活を直接左右する対流圏内の気象現象や 気象環境の研究に取り組んでいます。
境界層レーダー観測
MUレーダー技術を応用して開発された、L帯・可搬型の境界層レーダーでは、人間生活と密接に関わる大気下端(境界層)の観測が連続的に実施されています。図はインドネシア・ジャカルタ(左)と信楽(右)における各2日間の観測例で、大気境界層に相当する乱れの強い領域(赤色)が朝から昼にかけて急激に上昇し、午後次第に消滅していく様子を示していますが、赤道域(インドネシア)では中緯度(信楽)の数倍の高さに及ぶことが確認できます。
台風の「眼」の観測
MUレーダーは、通常の気象観測では測定不可能な鉛直流を含む3次元風速を 連続観測でき、気象学上未解明の集中豪雨をもたらす局所的に激しい 雲対流などの研究に、威力を発揮しています。 図は1994年9月29〜30日に信楽を通過した台風26号の接線風速の観測結果で、 台風に伴う風の低気圧性回転(黄〜赤色)領域が、 対流圏上部(高度12km以上)と「眼」(半径20km以内)内部で高気圧性回転 (青色)に転じる様子を明瞭に示しています。
圏界面重力波の観測
MUレーダー観測で大量に蓄積される高分解能・高品質のデータを 最大限に活用すべく、ウェーブレット(局在波解析)やフラクタル (自己相似性解析)などの新しい解析アルゴリズムの導入が 次々と試みられています。 図は1991年梅雨期3週間連続キャンペーン観測データの2次元正規直交 ウェーブレット解析結果で、高度方向に波長4km(緑色)、2km(赤色)、 1km(水色)の内部重力波の振幅が、対流圏界面付近(高度約14km)に 存在するジェット気流(紫色)によって、次々と変調されている 様子を示しています。