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2004(平成16)年度萌芽ミッションプロジェクト 1

研究課題

熱帯樹の成長輪解析に関する基礎研究

研究組織

代表

津田敏隆 (大気圏精測診断分野)

共同研究者

研究概要

熱帯域での地上気象観測は歴史が浅いため、長期的にデータを蓄積している観測点が少なく、またデータの連続性・信頼度も低い。赤道域、特にインドネシアを含むインド洋・西太平洋域はエルニーニョ現象で代表される気候変動の駆動源である。エルニーニョ等に同期して距離を隔てた地点でも気候変動が起こるため(テレコネクションと呼ばれる)、赤道大気の変動特性を解明することは全世界の気候変動を知る上でも重要である。特に長周期に亘る過去の気候変動を知ることは気候システムの理解を深めるとともに、将来の予測精度向上につながる。

しかし、熱帯域での地上気象観測は十分とはいえず、古くから長期的にデータを蓄積している観測点が少なく、データの連続性・信頼度も低い。長期気候変動を研究するには直接観測がなくても気象状態を推定しうる研究手法が有用であり、樹木年輪、珊瑚年輪、アイスコア、花粉などを解析する手法を用いて気候復元が行われている。この中で樹木年輪を用いる手法は年輪気候学と呼ばれる。年輪気候学は一年の精度で気候変動を取り出すことができ、且つ比較的古い時代まで遡ることができることが特徴である。そこで樹木年輪から測定した樹木成長より気候変動を推定する年輪気候学を直接気象観測が乏しい熱帯域に発展させるための基礎研究を行った。

熱帯樹には一般に成長輪が生成されないとされているが雨季乾季の明瞭な地域では樹木は成長輪を形成しうる。これまでの調査によりチーク (Tectona grandis)、スンカイ (Peronema canescens) をはじめとするいくつかの樹種では成長輪ができることが分かっている。熱帯では主に降雨量が樹木成長を支配すると考えられている。本研究では研究対象地域としてインドネシアを選択した。インドネシアでの年輪気候学は前例が少なく、わずかに Berlage (1931) が 400 年に亘るチーク年輪曲線を作成したこと、および Jacoby と D’Arrigo (1989~90, 1994) らによるその後継研究報告があるのみである。本研究では成長と気候との関係を研究し、長期気候変動の解明を目指す。国内外でも熱帯における成長輪解析は未成熟な研究分野である。生存圏研がこれまでインドネシアにおいて構築してきた木質・大気科学に関する共同研究体制を基礎に、新たな研究課題に挑戦する。