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第264回生存圏シンポジウム
天然ゴムのケミストリーとバイオロジー

日時・場所

日時: 2014(平成26)年9月26日 (金) 13:00–17:15 (受付開始12:30)
場所: 京都大学宇治おうばくプラザ セミナー室1、2
主催者: 京都大学生存圏研究所
申請代表者: 矢崎一史 (京都大学生存圏研究所森林圏遺伝子統御分野)

関連ミッション

関連分野

植物生理学、代謝化学、高分子化学。

目的と具体的な内容

天然ゴムはパラゴムノキの樹脂から得られる cis-ポリイソプレンで、年間で約 900 万トンが生産、消費されている天然の工業用原料である。天然ゴムに由来する製品は、車のタイヤをはじめとして多岐に渡り、その種類は 40,000 種にも及ぶと言われる。この天然ゴムは、その物性において合成ゴムをはるかにしのぐ性質を持つが、その製造原料は元々光合成で固定された CO2 に由来している。しかし、なぜゴムノキだけが優れた物性を持ったゴムを、しかも大気より固定した CO2 の数 10 % もゴム生産に送ることができるのか、また乳液(ラテックス)におけるイソプレン重合の生化学など、現在においても分子レベルでの解明はごくわずかしかなされていない。また基礎知見の体系化が遅れていることで、パラゴムノキがラテックスを生産しなくなるなどの生理現象や病態に対し、十分対処ができていない。一方で、産業界の利権が複雑に絡み合うことから、オールジャパン体制の研究コンソーシアムの立ち上げが遅れているのが現状である。

そこで今回、東北大学の高橋征司博士と共同で、ニーズがありながら実現できていない「天然ゴムの化学と生物」研究の集会を、大学側からの提案として設定し、新しい産学連携研究立ち上げのきっかけを作ることを目指した。

生存圏科学の発展や関連コミュニティの形成への貢献

天然ゴムは植物の生産物を利用した世界的な大産業であるが、この世界のゴム需要を充足できるパラゴムノキのポリイソプレン生産能力は、正に実用的植物工場の見本と言える。石油資源に依存しない社会構築を提唱する生存圏科学の一つの方向性として、この天然のイソプレン資源を単なるゴム工業にとどまらず、より低分子の植物由来工業原料として応用する研究が考えられる。そのためには、天然ゴム生産の生物学的な分子メカニズムを詳細に理解し、応用に向けた開発研究を発展させることが必要で、本研究会はその第 1 歩になると位置づけられる。

今回、大学側から呼びかけて、こうした研究集会の場を設定し、可能な範囲の中で研究者同士が「天然ゴムの化学と生物」のテーマの元で自由に議論することができれば、現在の我が国の科学技術をもってこの重要な研究領域に切り込んで行くきっかけを作ることになると考えた。実際、講演者や聴衆など多くの方から、「こうした研究会は国内で初めてのことではないか、開催してくれた殊に深く謝意を表する」との言葉を頂いた。

プログラム概要

開会の挨拶

  1. 天然ゴムの生合成
    パラゴムノキにおける天然ゴム生合成機構
    高橋征司准教授 (東北大学大学院工学研究科)
  2. 天然ゴムの構造・物性
    天然ゴムのナノマトリックス構造と物性
    河原成元准教授 (長岡技術科学大学工学部)
  3. 天然ゴムの資源活用
    低炭素社会実現に向けた天然ゴム資源活用
    大谷典正准教授 (山形大学理学部)
  4. 天然ゴムのゲノム・トランスクリプトーム
    (1) トランスポリイソプレン生産木トチュウのEST
    ライブラリーの作成と解析
    鈴木伸昭Hitz(バイオ)協働研究所招聘准教授 (大阪大学大学院工学研究科)
    (2) パラゴムトランスクリプトームの国際共同研究解析
    松井南博士 (理化学研究所環境資源科学研究センター)
     
    休憩
     
  5. ゴム生産植物の組織培養、形質転換
    (1) パラゴムノキにおける分子生物学研究の動向
    鈴木馨博士 (産業技術総合研究所(AIST)生物プロセス研究部門)
  6. 乳管細胞の生理
    (1) 天然ゴムの乳管細胞生物学(トチュウの乳管解析)
    中澤慶久Hitz(バイオ)協働研究所特任教授 (大阪大学大学院工学研究科)
    (2) 乳管細胞のタンパク質成分から生理機能を考える ~クワとイチジク(クワ科)~
    北島佐紀人准教授 (京都工芸繊維大学応用生物学部門)
  7. 植物における脂溶性物質の生産機構
    植物における脂溶性物質の生産機構 —シコニンをモデルにして—
    矢崎一史教授 (京都大学生存圏研究所)

閉式の辞


Symposium-0264ポスター PDF ファイル (3 207 802 バイト)