プロジェクト1: 木質形成(細胞壁形成・心材形成)の代謝統御ネットワークの解明

ゲノム科学時代を迎えた、樹木を含む植物の代謝科学では、代謝の個別解析と網羅解析の連携融合が必須となっています。すなわち、個々の代謝経路に関する詳細な生化学的解析と、発現している全てのmRNA、タンパク質および代謝物の網羅解析との有機的連携です。樹木の主要代謝には、心材成分生合成のように、その経路すら未解明のものや、細胞壁構成主要成分の一つであるリグニンの生合成経路のように、現在修正が続いているものが多数あります。

すなわち、木質の形成に関わる酵素遺伝子は、未知の酵素遺伝子が未だ残されていますが、既に機能が解明された遺伝子については、その発現の統御機構の解明が、大変ホットな研究領域となっています。

■代謝の個別解析

よって我々は、まず、機能未解明の部分に焦点を当て、リグニン、リグナンおよびノルリグナンの生合成について、個別に詳細な検討を続けてきました。例えば、最近、抗菌性ノルリグナンの合成酵素遺伝子やリグナンメチル化酵素遺伝子の取得に初めて成功しました。また、リグニン合成酵素をコードすると推定されてきた遺伝子の機能確定を進めています。

■代謝統御ネットワーク機構の解明

現在これらの遺伝子を起点として、木質形成代謝の統御を司る転写(制御)因子の取得を、遺伝子共発現ネットワーク解析を用いて、かずさDNA研究所との共同研究として進めています。既に、われわれは、ある種のリグニンの生成を特異的に増強する因子の取得に成功しました。

■網羅解析基盤の構築

一方、これらの機構解明には、遺伝子発現のデータベースが必要です。上記の研究ではデータベースの構築済みのモデル植物を用いていますが、実用植物では自前でデータベースを構築する必要があります。

そこで、われわれは、代表的な実用熱帯早生樹(アカシアマンギウム)をターゲットとして、遺伝子発現データベース(ESTデータベース)構築を、生存基盤科学研究ユニット、かずさDNA研究所と共同で進めています。このプロジェクトは、生存圏研究所のミッションとしても進めています。