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第293回定例オープンセミナー
梅澤俊明教授退職記念スペシャルセミナー
リグニン、リグナン及び関連化合物の生成と分解

更新日: 2023/06/08

開催日時 2022(令和4)年1月25日(水) 12:30–13:20
開催場所 オンライン(Zoom)
発表者 梅澤俊明(京都大学生存圏研究所・教授)
関連ミッション ミッション1 環境診断・循環機能制御
ミッション5 高品位生存圏

要旨

 演者は昭和51(1976)年に大学入学後、天然物有機化学或いは植物の二次代謝に興味を抱き、昭和55(1980)年に修士(博士前期)課程学生として樋口隆昌先生の研究室、当時の京都大学木材研究所リグニン科学部門、に入れていただいた。与えられた研究課題はリグニンの微生物分解機構の解明に関するものであり、随分がっかりしたが、直接ご指導いただいた当時助手の中坪文明先生(京都大学名誉教授、現京都大学生存圏研究所特任教授)は生粋の有機化学者で、微生物分解機構研究と言っても結局ほとんどは天然物有機化学的観点からの研究であった。ここで、同先生より手取り足取り有機化学のご教示をいただいたことは、その後の研究の基盤となり、この上ない幸いであった。この課題で博士の学位をいただいたのち、本来興味を持っていた分野に転向し、平成元年(1989)年以来、リグナン及び関連化合物(ノルリグナン、ネオリグナン等)の生合成研究に従事した。リグナン生合成に関しては、抗腫瘍性リグナンであるポドフィロトキシンの生合成や生合成における立体化学機構に関する研究を進めた。そして、リグナン生合成に関わる酵素の基質のエナンチオマーに関する選択性が、極めて多様なリグナンのエナンチオマー組成の決定因子であることを示した。また、多数のリグナンのメチル化酵素(Lignan OMT)の解析等を通して、リグナン生合成が植物種により収斂進化していること、および同様の機能を持つLignan OMTが異なる植物で平行進化していること等を示した。

 なお、時間的に前後するが、これらの研究を進めるにあたり、分子生物学の導入が不可欠となり、全く遅ればせながら平成11(1999)年に短期間ミシガン工科大学のVincent L. Chiang先生の下でリグナン及びリグニンの生合成の分子生物学に関する研究を行う機会を得た。ここで、Laigeng Li先生に手取り足取り分子生物学実験の実際の手ほどきをいただいた。

 平成15(2005)年に当研究室をお預かりするようになって、リグナン及び関連化合物の生合成研究に加え、リグニン生合成についても研究を進めることとした。ここで、リグノセルロース(木質)の利用特性向上に対し、当時すでに極めて多数の報告されていた研究とは全く逆の観点から研究を進めることとした。すなわち、積極的にリグニン増量を図る研究及びリグニンの構造単純化に関する研究を進めた。この過程で、イネ科植物における新規リグニン生合成経路の発見にも至った。また、利用に適したバイオマスの作出に於いては、その持続的生産と利用方法をも総合的に捉えることが重要であることを強く認識するに至り、インドネシア科学院(現インドネシア国家研究イノベーション庁)との国際共同研究として、「熱帯荒廃草原の植生回復によるバイオマスエネルギーとマテリアル生産」に関するプロジェクトを都合7年間推進した。上記の研究の多くの部分はこの共同研究の一環として推進した。

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2022年1月11日作成, 2月23日改訂

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